業務上の死亡で受けられる給付

労災保険

業務上の理由によって労働者が負傷したり、疾病にり患したり、死亡したりした場合、会社にお勤めの方であれば労災保険から保険給付を受けることができます。

労災保険の概要

業務上の理由によって労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合または死亡した場合に保険給付を行う国の制度で、労災保険を受けられる事故には、「労働災害」「通勤災害」の2つがあります。労災保険は、労働者を1名でも使用している事業の場合には、原則として加入が義務付けられており、保険料の負担は個人にはなく、会社が全額負担します。

労災保険の7つの給付

「労災保険」は仕事上や通勤によるケガや病気に対して、必要な保険給付を行う制度です。

1. 療養補償給付

  • 健康保険証を使って受診してしまいました。どうしたらよいでしょうか。
  • 療養費はいつまでもらえるのですか。
  • 通院費も支給されるのでしょうか。
  • 病院を変えたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

受診する場合、無料で治療が受けられます

出典:厚生労働省ホームページ

業務上の事由による病気やケガで療養を必要とする場合にもらえる給付です。労災病院または労災指定医療機関での療養を受ける場合は、治療費を払う必要がありません。それ以外の医療機関での療養を受ける場合には、一旦立替払いをして、後で療養の費用の支給を受けます。

2. 休業補償給付

  • 休業補償はいつまでもらえるのですか。
  • 会社が休みの日でも休業補償をもらえるのですか。
  • 出勤しながら週に1回は通院していますが、休業補償をもらえますか。
  • 1日でも会社を休んだら休業補償をもらえるのですか。
  • 休業補償の計算方法を教えてください。

仕事に行けない日は、給料の約8割をお支払いします

出典:厚生労働省ホームページ

傷病の療養のために休業し、賃金が受けられない場合に支給を受けられます。療養中の休業の4日目から支給され、1日につき、給付基礎日額の60%の休業補償給付と、20%の特別支給金があり、約8割の給付を受けることができます。例えば月給30万円の方の場合、給付基礎日額は30万円÷30で1万円なので、休業補償給付は1日約8,000円です。

3. 障害補償給付

  • 厚生年金をもらっていますが、障害年金ももらえるのでしょうか。
  • 障害とはどういう状態のことをいうのでしょうか。
  • 障害補償には年金と一時金があるとききました。違いを教えてください。
  • ボーナスは支給額の算定に加味されるのでしょうか。

障害が残った場合、年金か一時金をお支払いします

出典:厚生労働省ホームページ

症状が固定した後も障害が残った場合に、その補償としてもらえる給付です。残った障害の等級が第1級から第7級までの場合には年金、第8級から第14級の場合には一時金という形で、等級に応じた額の支給を受けることができます。両目を失明したなどの重い障害状態だと1級となり、給料によって変わりますが、30万円の給料だったとすると313万円程度を毎年受け取れることになります。

4. 遺族補償給付

  • 厚生年金をもらっていますが、遺族年金ももらえるのでしょうか。
  • 遺族補償給付を請求するにはどのような資料を準備したらよいのでしょうか。
  • 遺族補償給付の対象範囲を教えてください。
  • お葬式の費用ももらえるのでしょうか。

亡くなられた場合、遺族の方に年金か一時金をお支払いします

出典:厚生労働省ホームページ

業務上の事由による病気やケガにより死亡した場合に、遺族に支給される年金です。支給対象となる遺族は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(妻以外は年齢制限等要件有り)」と範囲が広く補償が手厚くなっています。

遺族補償年金の受給額は、遺族の数(受給権者と生計を同じくする受給権者の数)によって、以下の通りとなります。

  • 遺族が1人 給付基礎日額の153日分(一定の妻のみ175日分の場合有り)
  • 遺族が2人 給付基礎日額の201日分
  • 遺族が3人 給付基礎日額の223日分
  • 遺族が4人以上 給付基礎日額の245日分

例えば、死亡した夫の月収が30万円で、残された遺族がその夫により生計を維持されていた妻と18才未満の子ども2人だとします。妻が優先順位トップで受給権者(年金を受け取る人)となり、子ども2人を含めると遺族が3人ですから、遺族補償年金の受給額は「1万円×223日分=223万円」となります。
遺族補償年金は、妻は再婚するまで一生涯受け取れますが、子は18歳になる年度の3月31日までとなり、夫については受給資格として55歳以上または一定の障害がある場合となります(55歳以上60歳未満の夫は、受給権者となっても60歳になるまでは年金の支給は停止されます)。

また、年金の対象となる遺族がいない場合には、一時金が支給されることになります。その額は、給付基礎日額×1,000日分です。上記の例だと、「1万円×1,000日分=1,000万円」となります。

5. 葬祭給付

労災事故で亡くなった場合に、その葬祭費用分の給付を受けることができます。家族であるか否かを問わず、葬儀を行った人に支給され、社葬などの場合でも会社に対して葬祭料が支給されます。金額は315,000円に給付日額30日分となりますので、1万円の日額なら615,000円となります。※調整あり

6. 傷病補償年金

休業補償給付を受けている方の傷病が、療養開始後1年6ケ月を経過しても治癒せず、傷病等級第1級~第3級に該当する場合に休業補償給付に代えて支給される年金です。
なお、傷病等級第1級~第3級に該当しない場合には、そのまま休業補償給付が支給されます。

7. 介護補償給付

  • 「介護が必要な場合」とはどのような場合でしょうか。
  • 介護補償給付はいつまで請求できるのでしょうか。

介護を受けている場合、その費用をお支払いします

出典:厚生労働省ホームページ

障害補償給付または傷病補償年金の第1級または第2級の労働者が、介護を必要としており、現実に介護を受けている場合に支給されます。

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

労災保険は、亡くなったときの補償だけでなく、仕事中や通勤途中の病気やけがの治療費、仕事を休むことになった場合の休業補償、一定の障害になった場合の障害補償なども行っています。例えば、「通勤途中、駅の階段で転んだ」といったケースは意外と身近にあることですよね。
請求は会社がフォローしてくれますが、もしものとき会社加入の労災保険から補償が受けられることを覚えておいて損はありません。

この記事を書いたアドバイザー

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渡辺 和子 (わたなべ かずこ)