離婚時に夫婦で分割できる年金、できない年金

公的年金

「まさか、離婚するなんて思いもしなかった」。多くの方がその様な感想を持つようです。離婚話の最初は感情論。しかし、最終的には「お金の話」で決着をむかえるものです。財産分与の中でも、勘違いしていたり・請求を忘れたりしがちなのが「年金分割」。中には「これだけしかもらえないの?」という方もいます。離婚の決断をする前に、しっかり理解して、離婚後の人生計画を間違えない様にしましょう。

日本の年金制度を理解しよう!

年金分割は、「元夫の年金の半分」が貰えるわけではない

「離婚したら、相手方の年金の半分(支給額)がもらえるのでしょう?」という方が多いのですが、残念ながら違います。この違いを分かっていただくためには年金の仕組みを理解することが重要です。日本の年金制度は、下記の様に2階建て構造になっています。

公的年金の種類

「国民保険」と「厚生年金」があります(かつて公務員は共済年金に加入していましたが、平成27年に厚生年金に統合されました)。

年金分割できる部分

離婚時に分割できるのは、厚生年金部分のみです。国民年金部分(基礎年金)は年金分割の対象にはなりません。給与明細の控除項目には「厚生年金」としか書いていなくても、その中には「国民年金」(基礎年金)がしっかりとはいっているのです。

また、年金支給額そのものが分割されるのではなく「年金記録」が分割されます。そのため、分割後の本人の加入状況、例えば老齢年金受給のために必要な保険料納付済期間(10年)を満たしていないなどの場合は、例え分割されたとしても支給されません。

「年金分割」できる人・できない人・できる期間

「年金分割」は誰もができるわけではなく、ルールがあります。

  • 元配偶者が自営業者で第1号被保険者の場合は、厚生年金に加入していないため、年金分割はできません。離婚分割はあくまでも「厚生年金」部分のみなので、分割できるのは第2号被保険者の場合です。
  • 「夫」から「妻」へというルールではなく、「年収の高い人」から「年収の低い人」へ(厚生年金の受給が高い人から低い人へ)分割されます。
  • 「年金分割できる期間」はあくまでも婚姻期間中です。入籍する前・離婚した後は、対象となりません。
  • この分割は「合意分割制度」として、申請をしなくてはいけません。ただ離婚届けを出したから自動的に分割されるわけではないので注意しましょう。

3号分割制度

専業主婦(第3号被保険者)の方で、平成20年5月1日以降に離婚等をした人は、請求により平成20年4月1日以降の婚姻期間中の相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割できる制度があります。

「3号分割制度」は合意の必要はありません。ただし、分割される方が障害厚生年金の受給者で、分割請求をしている期間が障害年金の基礎になっている場合は「3号分割」は認められません。

請求期限

原則 下記に掲げる事由に該当した日の翌日から起算して2年以内

  1. 離婚をしたとき
  2. 婚姻の取り消しをしたとき
  3. 事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

離婚時の「年金分割」のご相談で特に多いのは次の二つのケースです。まずは請求を忘れた人・しない人です。離婚後、相手方と連絡をとるのは苦痛なものです。しかし人生100年時代、老後のお金は大切なもの。請求期限がありますから、細かいことをクヨクヨ考えずにしっかりと請求をして下さい。
もう一つは「年金分割」に頼りすぎる人。実際に年金分割できる部分は大きくありません。そこを過大評価しすぎて、実際に老後に受け取る年金をみてガッカリされるのです。離婚後のライフプランニング(生活費等のキャッシュフロー)をしっかり立てて、離婚破綻しないようにしましょう。

この記事を書いたアドバイザー

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寺門 美和子 (てらかど みわこ)