介護保険の給付内容

介護保険

介護保険は、健康保険のように実際に受けた治療費の一定額を負担するという仕組みではなく、介護の状態に合わせあらかじめ決められた介護サービスの中から必要なものを利用します。

2種類の介護サービス

1. 介護給付を行うサービス

実際に一人では生活ができないため、施設に入所したり在宅で介護を受けたり、あるいは施設に通ったりして生活をサポートしてもらうサービスが、「介護給付」です。

居宅介護サービスとしては、入浴介助、訪問看護、デイサービスなどが受けられます。通所サービスとしては、ショートステイなどです。施設サービスとしては、老人ホーム、老人保健施設などへの入居によるサービスを受けることができます。

2. 予防給付を行うサービス

要介護状態の発生を予防する観点から、要支援者に対して行うのが「予防給付」です。介護給付サービスと重なる部分はありますが、受けられることができる程度が軽く、補助的な介護となります。

これらのサービスを受けるのには、申請手続きを経て、本人やご家族とケアマネージャーが相談して、利用するサービスを選択します。

都道府県・政令市・中核市が指定・監督を行うサービス

介護給付を行うサービス
居宅介護サービス
  • 特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
訪問サービス
  • 訪問介護(ホームヘルプサービス)
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
通所サービス
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション
短期入所サービス
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
施設サービス
施設サービス
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
居宅介護支援
予防給付を行うサービス
介護予防サービス
  • 介護予防特定施設入居者生活介護
  • 介護予防福祉用具貸与
訪問サービス
  • 介護予防訪問入浴介護
  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防居宅療養管理指導
通所サービス
  • 介護予防通所リハビリテーション
短期入所サービス
  • 介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 介護予防短期入所療養介護

(出典:平成30年度厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」)

市町村が指定・監督を行うサービス

介護給付を行うサービス
地域密着型介護サービス
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
予防給付を行うサービス
地域密着型介護予防サービス
  • 介護予防認知症対応型通所介護
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
介護予防支援

(出典:平成30年度厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」)

この他、居宅介護(介護予防)福祉用具購入、居宅介護(介護予防)住宅改修、介護予防・日常生活支援総合事業がある。

介護サービスの使い方

「介護給付」と「予防給付」は際限なく使えるというわけではありません。これらのサービスは、サービスを受ける方の心身の状態によって、支給される金額が変わります(支給限度基準額)。区分の目安は以下の通りです。

要介護状態区分別の状態像
80%以上の割合で何らかの低下が見られる日常生活能力
要支援1
  • 起き上がり
  • 立ち上がり
要支援2 / 要介護1
  • 片足での立位
  • 日常生活の意思決定
  • 買い物
要介護2
  • 歩行
  • 洗身
  • つめ切り
  • 薬の内服
  • 金銭の管理
  • 簡単な調理
要介護3
  • 寝返り
  • 排尿
  • 排便
  • 口腔清潔
  • 上衣の着脱
  • ズボン等の着脱
要介護4
  • 座位保持
  • 両足での立位
  • 移乗
  • 移動
  • 洗顔
  • 整髪
要介護5
  • 麻痺(左下肢)
  • 食事摂取
  • 外出頻度
  • 短期記憶

(出典:平成30年度厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」)

具体的な自己負担額

要介護区分ごとに、利用できるサービスには上限があります(支給限度基準額)。該当する介護区分の支給限度額基準内であれば、利用したサービス費用の1割が自己負担です。ただし、基準額以上のサービス利用を希望する場合、介護保険は使えず全額自己負担です。

令和元年10月以降の区分支給限度基準額

介護度 限度額
要支援1 50,320 円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650 円
要介護2 197,050 円
要介護3 270,480 円
要介護4 309,380 円
要介護5 362,170 円

介護保険の自己負担額は所得により変わります。合計所得金額が160万円未満(年金収入280万円)の場合は1割ですが、高齢者の数が増え、今後も継続してこの制度を利用してもらうために、高額所得の高齢者には、もう少し負担してもらおうということになり、合計所得金額が160万円以上の人は、2割負担です。更に2018年8月からは、特に所得の高い人の負担割合が3割に変わりました。

利用者負担の判定の流れ(65歳以上の方)

本人の合計所得金額が220万円以上
年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で340万円以上、または2人以上世帯で463万円 3割負担
年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円以上340万円未満、または2人以上世帯で346万円以上463万円未満 2割負担
年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円未満、または2人以上世帯で346万円未満 1割負担
本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満
年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円以上、または2人以上世帯で346万円以上 2割負担
年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円未満、または2人以上世帯で346万円未満 1割負担
本人の合計所得金額が160万円未満
1割負担

第2号被保険者(40歳以上65歳未満の方)、市区町村民税非課税の方、生活保護受給者は上記に関わらず1割負担

(出典:平成30年度厚生労働省「平成30年8月から現役並みの所得のある方は、介護サービスを利用した時の負担割合が3割になります」)

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

介護給付は、これからの高齢化社会においてはなくてはならないものです。介護保険制度が破綻しないためには、高齢者の介護について、みんなで支えていくという考えが必要です。適切なサービスを、適切な金額で受けられる、そんな制度です。

この記事を書いたアドバイザー

アドバイザーの写真

竹内 美土璃 (たけうち みどり)