失業した時に生活を守る保険

雇用保険

会社を退職、あるいは解雇などで離職した場合、失業中の生活を心配することなく新しい職を探せるように、雇用保険から給付金が支給されます。そのうち、就職活動をしているにもかかわらず就職できない場合に支給されるのが基本手当です。基本手当は離職した理由、雇用保険に加入していた期間等によって支給内容が異なります。

基本手当とは

基本手当の受給要件

受給要件は2つあり、いずれの条件も満たしている必要があります。

  1. ハローワークで求職の申込を行い、働く意思と能力があるにもかかわらず職業に就くことができない「失業の状態」であること。
  2. 離職の日以前2年間に雇用保険に通算12ヶ月以上加入していること(途中会社が変わっても、通算月数が満たされていれば可)。ただし、解雇や倒産などの場合は、離職日以前1年間に雇用保険加入期間が6ヶ月以上あること。

基本手当の受給日数

離職の理由と雇用保険の被保険者期間によって異なります。

定年・自己都合退職による離職者
区分 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
全年齢 90日 90日 120日 150日
特定受給資格者(解雇や倒産などにより離職した方)・労働契約の満了により離職した方(病気などを理由に働けない場合、該当することもあります。)
区分 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日 -
30歳以上
35歳未満
90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
90日 150日 180日 210日 240日
障害者などの就職困難者
区分 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
45歳未満 150日 300日
45歳以上
65歳未満
150日日 360日

基本手当の受給期間

原則、離職した日の翌日から約1年間ですが、その間に病気やケガ、妊娠、出産などの理由で引き続き30日以上働けなくなった場合は、その日数分だけ受給期間が最長で3年間延長されます。延長するには、ハローワークに申請が必要です(60歳以上の定年等の場合でも、1年間延長可能)。

基本手当の待機期間

ハローワークに離職票を提出し求職を申し込んだ日から7日間は待機期間です。待機期間が終了するまで基本手当は受給できません。なお、自己都合退職の場合は待機期間終了の翌日から2ヶ月間は給付制限期間となり、この間も基本手当は受給できません。ただし、給付制限期間が2ヶ月となるのは、2021年10月1日以降に自己都合退職をして、かつ、5年間のうち離職回数が2回までの場合です。

下記のように、離職日から遡って5年間に2回以上離職がある場合は、3回目の離職における給付制限期間は3ヶ月になります。

出典:厚生労働省「失業等給付を受給される皆様へ「給付制限期間」が2ヶ月に短縮されます」

基本手当の受給額

離職した日の直前6ヶ月間の賃金のおよそ50%〜80%(60歳〜64歳については45%〜80%)で、賃金の低い方ほど高い率になります。受給額には上限と下限があり、上限額は年齢によって異なります。

(令和4年8月1日)
離職時の年齢 基本手当日額の上限額 基本手当日額の下限額
29歳以下 6,835円 2,125円
30~44歳 7,595円 2,061円
45~59歳 8,355円 2,061円
60~64歳 7,177円 2,061円

基本手当を受給するまでの流れ

① ハローワークで求職を申し込み、雇用保険被保険者離職票(1、2)を提出します。離職票は離職の際に会社に申し出をして発行してもらいます。

その際、持参する書類は、

  • 個人番号確認書類(マイナンバー、通知カードなど)
  • 身分証明証(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 写真2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード

ハローワークが提出書類をもとに受給資格の審査、決定を行います。

② 職業講習会

ハローワークの利用案内や就職活動方法などについての説明会が行われます。

③ 雇用保険説明会

雇用保険受給手続きの進め方についての説明会が行われます。

④ 失業の決定

原則4週間に1度、失業の認定が行われます。ハローワークから出される「失業認定申告書」に求職活動状況を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。

⑤ 基本手当受給

認定日から通常5営業日で基本手当が振り込まれます。

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

自己都合退職の場合、基本手当を受給できるのは約2ヶ月後です。2ヶ月間は無収入となりますし、基本手当の額は退職前の給与収入より少額です。国民年金や健康保険の支払いも発生しますから、退職する際は、離職後の生活設計をしっかり立てた上で、退職するようにしましょう。
また、基本手当を受けるには求職活動の実績が必要です。職業講習会や雇用保険説明会に参加すれば活動実績となります。民間の職業紹介会社や派遣会社への登録は活動実績にはなりません。不正受給とならないよう活動実績となるもの、ならないものを正しく認識しておきましょう。

この記事を書いたアドバイザー

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前田 菜緒 (まえだ なお)