公的保険の扶養と保険料負担について

公的保険とは

会社員・公務員が加入する公的保険には「扶養」という考え方・制度があります。扶養に該当するのであれば、人数に関係なく、健康保険料や厚生年金保険料を支払う必要がありません。これは国民健康保険および国民年金にはない制度です。

扶養の範囲

会社員や公務員の扶養になると、その人数に関わらず、健康保険や年金に保険料を支払わずに加入することができます。一方、自営業の方などが加入する国民健康保険や国民年金には扶養という概念がないので、同じ条件の家族などであってもそれぞれが「被保険者」となり保険料を負担します。原則扶養であっても、公的保険の給付は同じなので、保険料負担を考えると、扶養でいられる場合、経済的には大きなメリットです。
ただし、扶養はあくまでオプションのようなもので、認定されるためには数々の要件がありますので、後述する基準をご確認ください。

例えば健康保険では、被保険者が病気やケガをした時や亡くなった場合、または、出産した場合に保険給付が行われますが、その扶養されている方(被扶養者)が病気・ケガ・死亡・出産した場合も同じように保険給付が行われます。この保険給付が行われる被扶養者の範囲は次のとおりです。

  1. 被保険者の直系尊属、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、主として被保険者に生計を維持されている人
  2. 被保険者と同居していて、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
    1. 被保険者の三親等内の親族(1.に該当する人を除く)
    2. 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
    3. ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
相関図

それぞれの配偶者も同じ親等となる

なお、年金において被扶養者として認められるのは配偶者のみで第3号被保険者と呼ばれます。第3号被保険者は、国民年金のみに加入し、保険料の負担をすることなしで国民年金の加入者として給付も受けられます。

扶養に認められる生計維持の基準

「主として被保険者に生計を維持されている」、「主として被保険者の収入により生計を維持されている」状態とは、以下の基準により判断をします。

扶養の対象者が被保険者と同一世帯に属している場合

扶養している対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60 歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。

扶養の対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合

扶養している対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60 歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。

扶養に入りながら、パートやアルバイトで収入を得る場合には、勤務時間と収入に注意が必要です。収入は月108,333円(年収130万円未満)、勤務時間は勤め先の正社員の3/4以内が扶養の条件です。ただし、従業員数が101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業にパート勤めをしている場合は、収入は月88,000円(年収106万円未満)勤務時間は週20時間未満が扶養の範囲です。

税法上の扶養と社会保険上の扶養は違う!

税法上にも「扶養」という概念がありますが、社会保険の扶養とは条件が異なります。税法上の扶養は、被扶養者の給与の年収(暦年)が一定以下である場合に、扶養者の所得税や住民税の一部が控除されます。2018年1月より、配偶者控除を受けられる上限の年収が103万円から150万円に拡大されました。配偶者以外の扶養されている方の年収の上限は変わらずに103万円のままです。

一方社会保険上の扶養は上記でご案内しましたように、年収130万円以下で、自分の勤務先で社会保険の被保険者に該当しない働き方をする必要があります。この年収の考え方は、税法上のように暦年で考えるのではなく、「見込み」です。例えば年の途中で仕事を辞めて、そのあとの年収見込みが130万円以下となった時点で扶養となります。

税法上の扶養の場合は年末調整や確定申告、社会保険上の扶養の場合は年金事務所や健康保険組合への届出とどちらも申告の手続きが必要です。

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

公的保険の扶養には、扶養の範囲や収入要件を満たすことで入ることができます。扶養に入ることで、健康保険料や年金保険料が免除されたり、所得税・住民税の一部が控除されたりするなど家計的にもメリットは大きいので、該当する場合は漏れのないように手続きをお取りください。
一方で、これからは様々な働き方が求められていきます。また、将来や老後に向けた様々な人生設計が必要な時代となります。目先の収入を調整するよりも、どのような働き方をしてどのように収入を得ていくのか、個人個人、そしてそれぞれのご家庭のライフプランに合った働き方をされることをお勧めいたします。

この記事を書いたアドバイザー

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竹内 誠一 (たけうち せいいち)