年金は「つくるもの」老齢年金の計算方法
平均寿命が延びる中、65歳から支給される老齢年金は、より豊かなセカンドライフをおくるためにとても重要です。しかし、日本人の多くは、年金についての知識が少なく、将来の年金額がいくらなのかが分からないからと、老後に不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。実は老齢年金は公式にあてはめることで、簡単に計算ができます。
公的年金は2階建て
国の年金制度は、1階部分が日本国内に住所を有する人が加入する国民年金、2階部分が会社員や公務員が上乗せで加入する厚生年金保険という2階建てになっています。また、65歳から老齢年金として支給される国民年金を老齢基礎年金、厚生年金保険を老齢厚生年金と呼びます。
国民年金は原則20歳以上の全ての人が加入することから、「国民皆年金」と言われ、下記の図のように働き方などにより、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者の3つに区分されます。
平成27年10月より公務員の共済年金は厚生年金保険に統合されました。
老齢基礎年金の計算方法
国民年金から支給される老齢基礎年金は以下のように計算されます。
老齢基礎年金 = その年の老齢基礎年金満額 × 保険料納付済月数 480月
国民年金の保険料を40年間納めた人が受け取れる年金額(老齢基礎年金の満額)は、毎年の経済状況などにより国が決定します。2024年度の老齢基礎年金満額は816,000円ですが、今回は計算しやすいように「80万円」とします。例えば、20歳から60歳までの40年間のうち、保険料を支払った期間が360月であれば老齢基礎年金は60万円(80万円×(360月÷480月))ですし、420月であれば70万円です。つまり、1年加入するごとに2万円ずつ年金額が増えると理解できるでしょう。
しかし国民年金は20歳以上60歳未満の40年間(480月)のうち、原則10年(120月)以上保険料を納めていないと受け取ることができません。これが老齢年金の受給要件になります。したがって保険料を100月納めていた場合でも、上記の式にあてはめて80万円×(100月÷480月)=16.7万円が受給できるわけではなく、10年に満たないため0円です(今回は免除や猶予等は考慮していません)。
老齢厚生年金の計算方法
老齢厚生年金 = 平均標準報酬額 × 5.481※ 1000 × 厚生年金加入月数
会社員や公務員の方は2階建て部分の老齢厚生年金が65歳から支給されます。公式は上記のとおりです。平均標準報酬額というのは、厚生年金に加入した全期間の年収を12で割った数字です。
実際これまでの平均年収がどのくらいだったかなど、分かりませんから「ねんきん定期便」を参照します。これからの働き方により、老齢厚生年金がいくら「作れる」かは、これからの年収見込みで計算します。
5.481は給付乗率と言って国が決めた係数です。この数字はそのまま使ってください。
5.481は平成15年4月以降の給付乗率です。それより以前は7.125という数字を使っていましたが、その当時は老齢厚生年金の計算の元に賞与が含まれていませんでした。
年金の作り方(増やし方)
国民年金
ねんきん定期便やねんきんネットでこれまでの加入期間中に未納、免除、猶予期間がないか確認してみてください。もしこれらの期間があると将来受け取れる年金は減額してしまいます。老齢基礎年金を満額でもらえるように、追納や任意加入という保険料を後から支払う制度があります。
さらに、第1号被保険者であれば、付加年金といって国民年金保険料に毎月400円上乗せすることで、年金額を増やす制度もあります(200円×付加年金納付済月数)。
厚生年金保険
厚生年金保険は国民年金と違う点が2つあります。
1つ目は60歳以降も会社に勤めている方なら、70歳になるまで原則、厚生年金保険に加入し続けることで、その働いた期間に応じて年金が加算されます。
2つ目は給料によって将来もらえる年金額が変わってくるということです。
公式から分かるように、老齢厚生年金額を左右するのは、平均標準報酬額です。つまり、年収が上がれば将来の年金額も上がります。例えばスキルアップをして収入を増やすことができれば、より多くの年金を作ることができます。
公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス
公的年金は保険料をきちんと納めていると65歳から終身で受け取れます。まずはねんきん定期便やねんきんネットを使って自分が10年(120月)以上の受給資格期間を満たすことができるのか確認してみましょう。もちろん、年金加入期間が少なければ、年金は少ないのですからしっかり「作り方」も理解してご自身の将来設計にお役立てください。