雇用保険の役割

雇用保険

「雇用保険」というと馴染みがないかも知れませんが、「失業保険」という呼び方であればイメージがわく人も多いでしょう。失業した時だけではなく、働くすべての人に関わる雇用保険を解説します。

雇用保険の役割

雇用保険は、「仕事がなくなった時・働けなくなった時に備える公的保険」です。雇用保険の最大の役割は「労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進」です。さらに失業した時にとどまらず、出産・育児・介護等により継続して働けなくなった時の生活保障や、やむを得ず離職した場合の求職活動の支援をしてくれる制度です。

雇用保険の目的と種類

日本国民に加入が義務付けられている「社会保険制度」には5つの制度があり、国民の生活を様々な場面で保障しています。雇用保険はこのうち、労働者のリスクに備える保障です。

社会保険

全国民を対象に、病気・ケガ・老後等の様々なリスクに備える保障

  • 医療保険(国民健康保険・健康保険)
  • 年金(国民年金・厚生年金保険)
  • 介護保険(40歳以上)
労働保険

労働者に起こり得るリスクに備える保障

  • 雇用保険
  • 労災保険

雇用保険への加入条件

原則、人を雇用するすべての事業所は雇用保険法上の「強制適用事業」となり、その業種や規模を問わず、事業主は労働保険料の納付や各種届出などを行う義務を負います。ただし、個人事業や農林水産業等で従業員数が5人未満などの事業所は例外的に任意加入の「暫定任意適用事業」です。

会社員を対象とする「社会保険」(健康保険・厚生年金保険)は、適用除外に該当する方以外は被保険者となります。パートやアルバイトの場合は、所定労働時間が正社員の3/4以上あれば被保険者となります。一方「雇用保険」の被保険者には、一般被保険者、短期雇用特例被保険者、高年齢被保険者、日雇労働被保険者の4種類があり、1週間の所定労働時間が20時間以上、継続して31日以上雇用されることが見込まれる方はパートタイム労働者として一般被保険者となります。また、日雇労働者や季節的な労働者も、前記の各被保険者の条件を満たせば加入対象となります。

労働者の雇用保険の加入手続きは、原則事業主である会社側が行います。事業主が、労働者の「雇用保険資格取得届」をハローワークへ提出した後、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」を受け取ります。ただし、日雇労働者の場合は、自分でハローワークへ届け出をする必要があります。

雇用保険の被保険者等

雇用保険の適用事業に雇用されている労働者は、本人の意思とは関係なく、基本的に雇用保険の被保険者になります。つまり、会社勤めをしている人などは本人が希望しなくても基本的に雇用保険に加入しています。

雇用保険の保険料

雇用保険の保険料は、労災保険と共に各都道府県の労働局へ事業主が納付します。労災保険料は全額事業主負担ですが、雇用保険料は事業主と労働者それぞれが、定められた保険料率で負担します。労働者は、毎月の支払給与の総額に対し保険料が確定します。事業主の負担割合が労働者より多くなっているのは、事業主を助成するための「雇用保険二事業」の保険料を負担している分が反映されているからです。

令和5年度の雇用保険料率
事業の種類
労働者負担失業等給付の
保険料率のみ

事業主
負担
失業等給付
の保険料率
雇用保険
二事業の
保険料率
①+②
雇用保険
料率
一般の事業 6/1,000
(5/1,000)
9.5/1,000
(8.5/1,000)
6/1,000
(5/1,000)
3.5/1,000
(3.5/1,000)
15.5/1,000
(13.5/1,000)
農林水産
清酒製造の事業
7/1,000
(6/1,000)
10.5/1,000
(9.5/1,000)
7/1,000
(6/1,000)
3.5/1,000
(3.5/1,000)
17.5/1,000
(15.5/1,000)
建設の事業 7/1,000
(6/1,000)
11.5/1,000
(10.5/1,000)
7/1,000
(6/1,000)
4.5/1,000
(4.5/1,000)
18.5/1,000
(16.5/1,000)
  • 括弧内は令和4年度の雇用保険料率
  • 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適用されます。

厚生労働省ホームページ「令和5年度の雇用保険料率について」より抜粋

公的保険アドバイザーからワンポイントアドバイス

雇用保険は、主に労働者の離職後の生活サポートや雇用継続を目的とした社会保険制度です。雇用促進対策の目的もあり、内容の見直しもよく行われますので、ご自身でもハローワークのホームページで関心のある項目をチェックしていただくと良いかと思います。

この記事を書いたアドバイザー

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野原 亮 (のはら りょう)