2025年度施行:公的保険の改正・改定まとめ

2025年度(令和7年度)に施行される公的保険や関連制度の改正・改定の要点をまとめました。2025年度は、「出生後休業支援給付金」の創設や「子の看護休暇」の見直しなど、子育て支援に関する改正が多く実施されます。これらの改正により、育児や介護と仕事の両立支援など、多様な働き方を支える支援が、より一層強化されます。
2025年4月施行
雇用保険
出生後休業支援給付金の創設
子の出生後に一定期間内に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、育児休業給付に加えて「出生後休業支援給付金」が最大28日間支給されます。支給額は休業開始時賃金の13%で、育児給付と合わせると給料の手取りとほぼ同額になります。
育児時短就業給付の創設
育児休業から引き続き2歳に満たない子を養育するために時短勤務を行い、時短就業前の賃金と比較して時短後の賃金が低下した場合、育児時短就業給付が支給されます。支給額は時短勤務時の賃金額 ×最大10%(上限額あり)です。
自己都合離職者の給付制限の見直し
自己都合離職者の雇用保険の基本手当(失業給付)における原則の給付制限期間が2か月から1か月に短縮されます。さらに、自己都合離職者が、教育訓練等を受けた場合には、1か月の給付制限もなくなり、7日間の待期期間終了後すぐに失業給付を受け取れるようになります。
関連リンク:失業した時に生活を守る保険|公的保険の教科書
高年齢雇用継続給付の給付率引下げ
60歳到達時に比べて賃金が75%未満に低下した場合に支給されていた高年齢雇用継続給付の支給率の上限が、賃金額の最大15%から10%に引き下げられます。
関連リンク:高齢者への給付金と在職老齢年金|公的保険の教科書
育児・介護休業法
子の看護休暇の見直し
対象となる子の年齢が、小学校就学前から小学校3年生までに拡大されます。
また、取得できる理由も、病気やケガだけでなく、感染症による学級閉鎖、入学式・卒園式等にまで拡大されます。
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク等を追加
時短勤務が難しい場合の代替措置として、従来のフレックスタイム制や時差出勤に加えて、テレワーク等が新たに追加されます。
所定外労働の制限 (残業免除) の対象となる子の年齢を拡大
残業免除の対象が、「3歳未満の子を養育する労働者」から、「小学校就学前の子を養育する労働者」へと拡大されます。
育児休業の取得状況の公表義務の拡大
男性労働者の育児休業取得状況を年1回公表する義務のある事業主の範囲が、「労働者1,000人超」から「300人超」へと拡大されます。
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
介護申出をした労働者に対し、事業主は介護休業制度や介護両立支援制度等の内容を周知し、利用の意向確認を個別に行うことが義務付けられます。
また、介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、事業主は労働者等への介護休業や介護両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を行うことが義務付けられます。
2025年10月施行
雇用保険
教育訓練休暇給付金の創設
雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を無給で取得した場合、基本手当(失業時の給付)と同額が支給される教育訓練休暇給付金が創設されます。
育児・介護休業法
子の年齢に応じた育児と仕事の両立支援
3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対して、事業主は始業時刻変更やテレワークなど柔軟な働き方ができるように対応し、それらを労働者が選択して利用できる環境を整備することが義務付けられています。また、これらの対応内容について個別の周知・意向確認を行うことも義務付けられます。
妊娠・出産の申出時や3歳前の時点での意向確認
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前の段階で、仕事と育児の両立に関する労働者の意向を個別に聴取し、必要な配慮を行うことが義務付けられます。
出典
著作者情報
公的保険アドバイザー
前田菜緒