2025年10月スタート教育訓練で仕事を休むと給付金が支給される教育訓練休暇給付金とは

2025年10月より「教育訓練休暇給付金」制度がはじまります。この制度は教育訓練に専念するために、仕事を無給で休んだ場合、その間の生活費を支援するために設けられた制度です。このコラムでは、対象者や制度内容について解説します。
教育訓練休暇給付金制度の内容
教育訓練休暇給付金は雇用保険の制度です。これまで、従業員が教育訓練のために仕事を休んだとしても、その間の生活費を保障する仕組みはありませんでしたが、今回新たに創設されました。
給付額は、失業した場合に支給される基本手当の額と同じです。 基本手当は、直近半年間の平均賃金の50~80%(60歳~64歳については45~80%)で、賃金が低いほど給付率が高くなっています。たとえば、離職時の年齢が45~59歳で賃金日額が約2,900円~5,200円の場合、給付率は80%ですが、約13,000円~17,000円の場合、給付率は50%です。
給付日数は被保険者期間によって異なり、被保険者期間が5年以上10年未満の場合は90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上なら150日です。
支給対象者は
支給対象となるには、次の両方の条件を満たす必要があります。
- 休暇開始前2年間に12か月以上の雇用保険の被保険者期間があること
- 休暇開始前に5年以上の雇用保険加入期間があること(離職期間があっても1年以内なら離職前後の期間の通算が可能)
ただし、過去に失業給付や教育訓練給付金、育児休業給付、パパ育休の給付金を受けたことがある場合、その期間は通算対象外となる可能性があります。
支給対象となる休暇とは
支給対象となる休暇は、次の条件すべてを満たす必要があります。
- 就業規則や労働協約などに規定された休暇制度に基づく休暇であること
- 労働者が自発的に受講することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇であること
- 下記のいずれかの教育訓練等を受けるための休暇であること
・大学・大学院・高専・専修学校など学校の教育訓練
・教育訓練給付金指定講座を有する法人が提供する教育訓練給付等
・職業安定局長が定める職業に関する教育訓練
ただ、この制度を利用するにあたっては大きな課題があります。それは、上記①を満たす企業が非常に少ないことです。令和6年度「能力開発基本調査」によると、教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%で、そのうち、30日以上の長期休暇を取得できる企業は28%となっています。さらに、休暇制度については「導入していないし、導入する予定はない」と回答した企業が83.7%に達しています。
教育訓練休暇制度を導入するのは企業の任意であるため、導入されていなければ、教育訓練休暇給付金の制度が創設されたとしても利用することはできません。利用を検討する際は、勤務先の規定をよく確認しておきましょう。
教育訓練休暇給付金手続き方法
教育訓練休暇給付金の制度を利用するためには、まず、会社に「教育訓練休暇取得確認票」を提出します。それを受け、会社がハローワークに書類を提出するなど手続きを行います。その後、従業員は、会社から交付された書類を記入しハローワークに提出、さらに、休暇開始日から30日ごとにハローワークに書類を提出します。
リスキング支援は年々手厚く
近年、リスキングに対する支援は拡充傾向にあります。2024年10月には、教育訓練給付金が拡充される改正が行われました。また、2025年4月は、失業時の基本手当受給において、教育訓練を受ける場合は1~3か月の給付制限が解除される改正が行われました。そして、10月からは教育訓練休暇給付金制度がスタートします。
キャリアアップを目指す雇用保険加入者にとって、活用しやすい環境が整いつつあります。リスキングを考えているなら、受けられる給付があるか確認してみると良いでしょう。
公的保険アドバイザー
前田菜緒
<参考>
厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001507469.pdf
厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」調査結果の概要https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001507469.pdf
厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/001543278.pdf