雇用保険の「離職理由」について

最近は、転職エージェントのCMが加速し、転職やキャリアチェンジが当たり前の時代になってきました。すぐに転職できる状況であれば問題ありませんが、仮に不意の状態が訪れ、離職の危険に晒されてしまうことも少なくありません。そんな時に救ってくれるのが公的保険の一つでもある「雇用保険」です。雇用保険は、退職だけでなく、教育訓練などのリスキリングにおける給付もありますので、自身のキャリアをアップしていく上でも有効な制度となっています。
今回は、急な離職を突きつけられた時に助けてもらえる「失業給付」について考えてみましょう。
失業給付は正確には「基本手当」と言いますが、いわゆる失業保険で通じる方も多いことでしょう。その基本手当は、離職理由によって給付の内容が異なってきますので整理をしておきます。
- 一般受給資格者:転職など個人的な事情により離職した人(自己都合退職など)
- 特定受給資格者:倒産、解雇等の理由により離職を余儀なくされた人
- 特定理由離職者:有機契約の雇止めなど、やむを得ない理由により離職した人(期間満了、病気など)
自己都合退職した人と比べて、特定受給資格者や特定理由離職は手厚い給付を受けることができますので、給付日数等の詳細は別途ご確認ください。
この二つの大きな違いは、離職せざるを得なかった理由によることになります。どちらも自己都合退職とは異なり、労働者本人に責めのない、やむを得ない理由での離職という点が共通していますが、その深刻度や緊急性によって区分されています。
具体的な該当例は以下のとおりです。
[特定受給資格者の例]
- 会社の倒産等による離職
- 解雇
- 労働条件の相違
- 長時間労働(月45時間超の残業が3か月連続、月100時間超えの残業等)による離職
- 賃金の大幅な減額(85%未満への低下)や未払いによる離職
- ハラスメントによるもの
- 有期雇用の雇止め(3年以上継続、または更新予定だった契約等)
[特定理由離職者の例]
- 有期雇用契約の更新を希望したが更新されなかった(ただし、特定受給資格者に該当する場合を除く)
- 妊娠・出産・育児による離職
- 家族事情の急変(両親の死亡・疾病、介護等)
- 通勤不可能(結婚による転居、事業所移転等)
- 結婚による転居で通勤困難
上記は代表的なものですので、個々の事情によって変わってくることをご理解ください。
このように、特定受給資格者か特定理由離職者か、または一般受給資格者のままなのかは、離職時に確認する「離職証明書」に記載されます。しかし、この部分をうっかり見過ごしてしまうことで、給付内容が大きく変わることがありますので、離職を視野に入れている方は離職理由についても注意しておきましょう。
転職や再就職を目指す方にとって、経済的な不安を和らげる重要なポイントです。最新の情報を正しく理解し、ご自身のキャリアプランにお役立てください。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫