2026年4月に130万円の壁が緩和へ――扶養内パートはどうなる?

税・社会保障 2025/11/04

2026年から「130万円の壁」のルールが一部変更されます。扶養内で働く人にとっては重要な変更であるため、内容を確認しておきましょう。

130万円の壁とは

近年、年収の壁は改正により大きく変化しています。そこで、「130万円の壁」が適用される人や130万円に含まれるものなどをまずは整理しましょう。 

「130万円の壁」とは、配偶者の扶養に入っている人が年間の収入が130万円以上になると、社会保険の扶養から外れる基準を指します。これを超えると、自身で社会保険に加入する必要があります。

一方で、短時間労働者には「106万円の壁」も存在します。「106万円の壁」は、企業規模が一定水準以上であることや年収が106万円以上、週の勤務時間が20時間以上等条件を満たすと、本人が勤務先の社会保険に加入することになる基準です。

したがって、130万円の壁が適用される人は、「106万円の壁」対象外である小規模事業所で働く人、週20時間未満で働く人等に該当する年収ラインと言えます。そして、この130万円には、交通費や残業代、各種手当等がすべて含まれ、今後1年間の収入見込みにより判定が行われます。収入見込みが130万円を超えると、扶養には入れません。

なお60歳以上の人は基準が130万円ではなく180万円、19歳以上23歳未満の場合は150万円が扶養と認められる収入上限です。

 

2026年からはどう変わる?

 

扶養内で働き続けたい人の中には、年収が130万円を超えそうになると仕事をセーブしたり、残業を控えたりといった「就業調整」を行う人も多いでしょう。現行制度では、人手不足による残業で一時的に収入が増加した場合は、事業主の証明書を提出することで扶養に入り続けることができます。ただし、130万円を3年連続して超過したり、継続的に130万円を超過したりする見込みの場合は、扶養から外れることになります。

しかし、2026年4月からは、この運用が見直されます。見直し後は、労働契約上から計算した年間収入が130万円未満である場合は、扶養から外れない扱いになります。厚生労働省の事務連絡によると“就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととした”とあります。

したがって、2026年4月以降は一時的な残業によって収入が増えても、契約上の年収が130万未満であれば、勤務時間調整など行わなくてもよいことになりそうです。ただし、残業などで収入が130万円以上になったとしても、それが妥当な範囲を超えれば扶養から外れることになりますし、各種手当や交通費などが収入に含まれる点に変わりはありません。

 

働き方を再確認しよう

 

今回の変更は、「壁」が緩和される形ですが、将来的には「社会保険加入が当たり前」の方向に進んでいます。社会保険加入には、保険料負担は増えるものの、将来の年金額が増える、傷病手当金や出産手当金など給付が受けられる保障面のメリットもあります。

 「扶養のまま働く」か「社会保険に加入して年収の壁を越えて働く」か――どちらが自分や家庭にとって良い選択となるか、今の働き方を見直す良い機会かもしれません。

 

公的保険アドバイザー
前田菜緒

 

<参考>
厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定 における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0070.pdf 

厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定 における年間収入の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf