保険料免除制度は、外国人にも有利に

税・社会保障 2025/07/01

日本の公的保険制度の中で、国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人は国民年金に加入する義務があります。しかし、収入が少ない、あるいは学生であるといった理由で、毎月の保険料の納付が経済的に難しい場合もあるでしょう。「払えないから」と未納のまま放置してしまうと、将来受け取れる年金額が減るだけでなく、万が一の際の障害年金や遺族年金が受け取れなくなる可能性もあります。たとえその方が日本国籍を持たない外国人で住民登録をした方も同様となります。


今月は、保険料の免除制度と猶予制度、そして意外に盲点であった、外国人の国民年金保険料について考えてみます。


様々な事情で保険料を納めることができない場合、「保険料免除・納付猶予制度」があります。保険料免除制度は、「全額免除」、「4分の3免除」、「半額免除」、「4分の1免除」の4種類があり、承認されると保険料の全額または一部の納付が不要になります。免除や猶予が承認された期間は、将来老齢基礎年金を受け取るために必要な「受給資格期間」に算入されます。これは「未納期間」との大きな違いです。


さらに、免除・猶予期間中に病気やけがで障害が残った場合や死亡した場合でも、障害年金や遺族年金を受け取ることができます(ただし、保険料の納付要件を満たしている必要があります)。


免除が承認されるかどうかは、申請者本人、配偶者、世帯主のそれぞれの前年所得が審査の対象となりますので、それぞれ確認していただくことが必要になります。


免除制度と同様に、「納付猶予制度」も有効です。20歳以上の学生で、本人の所得が一定以下の場合に申請することで、在学中の保険料の納付が猶予される制度です。


この制度を利用する最大のメリットは、将来受け取る年金額には反映されないものの、受給資格期間には算入される点です。また、病気や事故といった不慮の事態に備え、障害年金などの保障は確保されます。社会人になってから保険料を追納することで、将来の年金額を増やすことも可能です。


ただ、忘れてしまいがちなことは、自動更新ではないため、年度ごとに手続きをする必要がありますので注意してください。


この学生納付特例制度は、前述した住民登録をした外国人の留学生にも適用されるのですが、それを知らない方が多く、制度の周知が足らないためか知らない方が多くいらっしゃることが問題になっています。


多くの留学生は、4月の入学のために3月に日本に来られると仮定します。そこで住民登録を行うことで国民年金を納める義務が発生するのですが、申請を行わないために1ヶ月分のロスがでてしまいます。


そのまま4年間、あるいは6年間日本にいることで割と長期間になりますので、納付特例は大きなものになってきます。


一般的に、日本人であれば年金の受給資格を得るためには10年間の期間を満たすことが必要ですが、外国人の場合、6ヶ月以上保険料を納めることで「脱退一時金」が受給できることになります。出国後2年以内に請求することで受け取れる制度ですので、ぜひお近くに住んでおられる外国人の方に知っていただき、申請を行っていただきたい項目といえます。


日本に在留する外国人は、令和5年の調べでは、10年前の平成26年と比較して、約1.6倍の341万人が暮らしているそうです。留学生だけでなく、個人事業として事業を営んでいる人も多いことでしょう。


将来自分が受け取れる可能性や、障害が残った時のセーフティーネットとして、うまく制度を活用できるように周知していきたいものです。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫