【2028年4月遺族年金改正】親が離婚や再婚をしても子は遺族年金を受け取れるように

年金 2025/07/03

2025年6月、年金制度改革法案が成立しました。社会保障制度の加入対象者の拡大や、働きながら年金を受け取る際のルール変更など、改正内容は多岐にわたります。本コラムではその中でも、夫婦の離婚や再婚により、子どもが受け取る遺族年金にどのような変更が加えられたのかを解説します。

 

親が死亡しても子が遺族年金を受け取れない場合がある

 

現行の制度では、親が死亡したにも関わらず、子が遺族年金を受け取れないケースがあります。今回の改正で受け取れるよう変更されたため、具体例で改正内容を確認しましょう。なお「子」とは、18歳になって3月31日を迎えていない子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級、2級の状態にある子を言います。

 

親が離婚した場合

両親が離婚し、子は母に引き取られ、別居していた会社員の父が亡くなった場合を例にして考えます。なお、父は再婚していないものとします。

両親がもし離婚していなければ、父が亡くなると母が遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることになります。これは母が父の配偶者だからです。しかし、離婚すると母は父の配偶者ではなくなるため、母に遺族年金の受給権はありません。

しかし、子は父と親子関係がありますし父から養育費をもらっているなど生計同一要件が認められれば、子は遺族基礎年金を受給する権利があります。ところが、現行制度では母と生計が同じであるため遺族基礎年金は支給停止されてしまうのです。

そこで、今回の改正では、子が母と生計が同じでも遺族基礎年金を受給できるようになりました。なお、遺族厚生年金は現行制度においても子が18歳になるまで受け取ることができます。

 

死別した後に再婚した場合

父が亡くなった後に母が再婚した場合はどうでしょうか。父が死亡した時点では母は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることができます。しかし、その後、母が再婚するとそれら遺族年金を受け取る権利はなくなります。

そこで、遺族年金を受け取る権利が母から子に移るのですが、先ほどの①のケースと同様、子は父母と生計が同じであるため現行制度では遺族基礎年金は受給停止となってしまいます。

しかし、今回の改正により、子は遺族基礎年金を受け取ることができるようになります。なお、遺族厚生年金については、現行制度でも子が18歳になるまで受け取ることができます。

今回の改正の背景には、離婚の増加など家庭環境が多様化している社会的背景があります。親の離婚や再婚によって子の遺族基礎年金の支給・不支給が左右されるのは子の生活安定という観点から適切ではないとのことで改正に至りました。

 

その他子どもに関する遺族年金の改正内容

 

また、遺族基礎年金には「子の加算」という子ども手当があります。今回の改正では子の加算の金額がアップします。さらに、現行では第三子以降の加算額が少ないのですが、改正後は子の人数に関わらず一律の金額となります。具体的には下記の通りです。 

現行:第1子と第2子:234,800円 第3子:78,300円
改正後:子の人数にかかわらず一律281,700円(2024年度価格)

 

遺族年金が支給される場合支給されない場合を理解して備えておく

 

親の離婚や再婚に関わらず、子が遺族基礎年金を受け取れるようになったのは、子の経済的安定という側面において、大きな改正になると思います。ただし、①で紹介した離婚のケースにおいては、注意が必要な点もあります。それは、別居の親から養育費など生活費を仕送りしてもらっている必要があるということです。そもそも遺族年金が支給されるためには生計同一要件が必要です。したがって離婚前に養育費などを取り決めることは必須と言えます。

今回は、子どもに関する年金の支給拡充を紹介しました。この改正は子育て支援の目的もあります。遺族年金の改正はこれだけではありませんが、他の改正においても今の時代によりマッチした内容にするための改正となっています。遺族年金は生活に困った際に受け取る年金です。制度は複雑ですが、年金を受け取る資格があるかどうかは知っておくと万一の際の備えになるでしょう。

公的保険アドバイザー
前田菜緒