2023年の公的保険の法改正を解説
2023年がはじまりました。2022年は年金に関する法改正が多数施行されましたが、2023年もいくつかの法改正が予定されています。2023年の公的保険に関する法改正についてお伝えします。
2023年4月1日 育児休業取得状況の公表義務化
2022年は、育児休業を取得しやすいよう事業主が環境整備すること等が義務化されました。さらに、産後パパ育休が創設されることで男性の育児休業取得促進の取り組みが行われました。それに関連し、2023年は従業員1,000人超の企業は男性の育児休業などの取得状況を年1回公表することが義務化されます。公表内容は、下記の①又は②のいずれかです。
①男性の育児休業等の取得割合
②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得割合
<算出方法>
①(育児休業等をした男性労働者の数*1)÷(配偶者が出産した男性労働者の数*1)
②(育児休業等をした男性労働者の数+小学校就学前の子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数)÷(配偶者が出産した男性労働者の数*1)
*1)いずれの労働者も公表前事業年度中に雇用されている必要があります。
従業員が1,000人超の企業が対象となりますが、従業員とは、正社員・アルバイト・パートなど雇用契約の形態は問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者をいいます。また、閲覧できる方法としては、自社のホームページや厚生労働省の運営サイト「両立支援のひろば」などが推奨されているため、インターネットで誰でも情報を得られる状況になると予想されます。
2023年4月1日 繰下げ申し出みなし制度導入
2022年4月に公的年金の受給開始年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられました。これによって、受給開始年齢を60〜75歳の間で自由に選ぶことができるようになりました。しかし、一方で、年金の時効は5年であるため、繰下げ待機している人が70歳以降繰下げをやめて増額されない年金を受け取ろうと思っても5年より前の年金は時効で消滅しているため、消滅した年金を受け取ることはできませんでした。
たとえば、72歳まで繰下げをしようと待機していたけれど、それを辞めて繰下げしない本来の年金を受給しようと思ったとしましょう。この場合、5年前の67歳までしか遡れず65〜67歳までの年金は時効で消滅しているため受給できません。
しかし、繰下げ申し出みなし制度によって、72歳で繰下げの申し出をせず、本来受給を選択する場合、67歳に繰下げをしたとみなされるため、65〜67歳の2年間分が繰下げられ16.8%(0.7%×24月)増の年金を5年分一括で受け取り、その後も16.8%増額された年金を受け取ることになります。
繰下げ申し出みなし制度により、請求時点の5年前に繰下げ申し出があったものとみなされ、5年前の増額率で年金を受給できるようになるのです。ただし、この制度は70〜79歳に適用される制度であるため、80歳以降には適用されません。
80歳以降に請求する場合は、繰下げ申し出を行う場合は、75歳時点で計算した繰下げ受給額5年分が一括で支払われるとともに、75歳時点の繰下げ受給額をその後も受け取ることになります。繰下げ申し出をしない場合は、65歳時点の本来受給額5年分が一括で支払われるとともに、その後も本来の年金額が支給されます。したがって、80歳以降に請求する場合は繰下げ申し出を行う方が有利となりますが、いずれの場合も一括支給されるのは請求前5年間分となります。
2023年4月 出産一時金の引き上げ
出産一時金は現行42万円ですが、これが50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合48.8万円)に引き上げられることが予定されています。
以上が2023年に予定されている公的保険に関する法改正ですが、そのほかにも改正情報あれば、順次お伝えしていきたいと思います。
公的保険アドバイザー 前田菜緒