2023年少子化対策について考える
昨年末から少子化対策に向けた話題が多くなりました。少子高齢化の中でも少子化は大きな課題となっており、国や自治体はあらゆる政策を取りつつ、次世代の育成について検討しています。出生率が少なくなっている今、2023年は少子化について進んでいくものと思われます。
今月は、国や自治体の少子化対策についてまとめてみます。
岸田首相は、昨年末から今年にかけて少子化対策に関して発表し、3月を目処に対策を検討していくとしました。現在出生率は下降の一途をたどり、2015年に1.45%だったものが、2021年は1.30となり、コロナ禍によって2022年はさらに加速し1.26%に迫るのではないかとされています。
これまで、待機児童対策や不妊治療対策など、少子化に関する政策を実行してきましたが、さらに踏み込んだものが必要になってくる時期に来ていると考えます。
国は、児童手当の増額を示す一方、東京都知事は第2子の保育料の無償化や18歳までの子どもに一括で6万円を給付するなどの政策を打ち出しています。それ以外にも各自治体による独自政策も進み、各地で少子化対策が進んでいるものと思われます。
また、働き方改革の一つとして、仕事と育児の両立支援政策として育児休業取得期間の拡充や、短時間勤務に対する給付の創設なども検討されています。短時間勤務は、育児世代にとって欠かせない時間の確保ではありますが、その分給与が減額されてしまうため、育児と生活を支える面での不安がつきまとうものです。この減収分を補うことも検討されており、制度がスタートすることで利用者は広がるのではないかと考えられています。
フリーランスや最近急増しているギグワーカーとして働く人への対策も検討しており、働きながら子育てをするあらゆる人たちにとって、いい制度改革になるのではないでしょうか。
出産の場面に目を向けると、出産育児一時金の増額も大きな話題となっています。出産育児一時金制度は、協会けんぽなどの健康保険に加入している方が出産することに対しその費用の一部を補償するもので、現在は42万円が給付されています。実はこの制度、1994年に30万円でスタートした新しい制度でもあります。出産費用の高騰に対して、時期をみては改正が続き、今後は50万円に引き上げることを検討しています。
2021年の出産費用の実態把握に関する調査研究(厚生労働省)によると、公的病院を含めた全施設における平均出産費用は46.7万円となり、年間平均1%ずつ上昇しているとのことです。また、各都道府県によっても費用のばらつきがあり、一番高いのは東京都の55.3万円、低いのは佐賀県の35.1万円と、格差も公表されています。あくまで平均値ですので、さらに金額の大きな出産費用になっていることも事実です。出生率が下がっているのに、出産費用が増え続けるというなんとも不思議な現象ともいえます。
この調査の中に、妊婦へのアンケート結果も掲載されており、出産場所を選んだ理由に自宅から近い、施設の知名度、病室環境などが高い回答となり、人生で大切な時を過ごすための場所を選ぶ傾向にある反面、費用が安いとする回答は低い割合となっています。
出産は病気ではないという考え方から医療機関では自由診療になっており、前述のように各医療機関によって費用は異なってきます。この病気ではないという考え方も変革の意見があり、一般の診療と同様にすべきではないかという意見も以前から出ていることは事実です。
国として保険適用することで全国格差もなくなることから、費用負担面も踏まえて議論していただきたい問題です。
少子化は、今後の私たちの生活する上で大きな問題です。公的年金は世代間扶養で成り立っています。今一度制度の本質を考えながら、人工減少に歯止めが止まることを期待したいものです。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫