社保適用拡大は将来の資産形成のチャンス
社会保険の適用拡大が10月に迫ってきました。ご存じのように段階的に適用される方を拡大していく制度ですが、まもなく100人超えの事業所が対象となってきます。今回の適用拡大を受けて、500人超えの事業所に対しても、加入促進を強化するなど大きなメスも入っています。コロナ禍によって働き方は変わったかもしれませんが、法改正については待ったなしの状態です。
社会保険に加入することを安心ととらえるのか負担ととらえるのか、ボジティブに考えてまいります。
まず、社会保険の加入対象となるのは、正社員などのフルタイムで働く方はもちろんのこと、パート・アルバイトという呼称の方でも、1週間に働く予定の時間が正社員に比べて4分の3以上(仮に正社員が1週あたり40時間働くとすれば30時間以上)働くことなどを契約している方が該当となります。さらに、500人超えの事業所で働いているパート・アルバイトの方は、以下の要件に合致すれば社会保険に加入する制度となっています。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
この制度について、本年10月からは500人超えの企業から100人超えの企業が対象となるものです。
社会保険の適用拡大についてよくある質問は、この500人超えや100人超えのカウントはどのようにするのかということです。基本となる人数は、正社員などのフルタイム勤務の方に加えて、前述した4分の3以上働く方をプラスした人数で決まることになっています。つまり、正社員30名、4分の3以上働くパートが80名、20時間以上30時間以下のアルバイトが30名の場合、対象者は110名となりますので、10月の適用拡大の対象となる考え方となり、60名のパートを既に加入させていた場合であって、20時間以上のアルバイトが上記の要件に合致すれば、さらに資格を取得することになってきます。
また、加入対象の方を把握する上で混乱しそうなものが、賃金の考え方です。8.8万円以上となっていますが、対象者を選別する上では「基本給」や「諸手当」を足したものとし、実際に時間外で勤務した賃金は含まずに考えることになります。しかし、実際に資格取得の手続きをする上では、時間外手当などを含めた賃金で標準報酬月額の等級を決めることになりますので、そのあたりが間違えやすい点ではないかと考えるところです。
実際に加入するにあたっては、さまざまな意見や考え方があることは事実です。パートの意見としては、賛成派、反対派それぞれの考えがありますが、反対派の意見は「社会保険料負担が大きい」、「収入が減ってしまう」、「働き方を変えなければならない」など否定的な考えも多くあります。どうしても、目先のお金のことや毎日の生活に目がいってしまい、将来を俯瞰できていない状況ともいえます。
コロナ禍で働き方が変わったと冒頭に申し上げましたが、だからこそ将来に目を向けるべきであり、自分の将来の資産について、公的年金という大きな仕送りをするチャンスが来たと感じていただきたいと考えます。
社会保険の適用拡大は、「年金は作るもの」という私たちのテーマに合致した制度といえます。ただ単に保険料を納めていくということではなく、少しでも自分の公的年金を積み上げていただくことを多くの方に理解していただきたいと考えています。不安もわかりますが、これからの自分の将来は自分で作ると思うと、やる気と勇気がわいてくような気がいたします。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫