2022年10月社会保険加入の拡大、加入するとどうなるの?

税・社会保障 2022/08/15

2022年10月から社会保険加入の対象者が拡大します。いわゆる「106万の壁」への適用対象者が増えるわけですが、その対象となる人や対象になるとどうなるのか解説します。

 

社会保険適用拡大の対象者は

今回、あらたに社会保険加入対象となる人は、勤めている企業の従業員数が101人〜500人規模の企業で、下記の条件すべてを満たす人です。「従業員」とは、フルタイムの従業員、週の労働時間や月の労働日数がフルタイムの従業員の4分の3以上の人です。アルバイトやパートでも、この条件を満たせば、従業員に含まれます。

<2022年10月より社会保険加入対象となる条件>
①週の所定労働時間が20時間以上
②月額賃金が8.8万円以上
③2か月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない(休学中、夜間学生は加入対象)

現在、従業員数が501人以上の企業に勤める人は、労働時間や労働日数がフルタイム従業員の4分の3未満でも、上記条件にあてはまれば、社会保険に加入することになっています。

今回は、その企業規模が101人以上の企業にまで拡大された形です。さらに、2024年10月には、従業員数51人以上の企業にまで拡大されます。

 

残業時間や残業代は、労働時間や賃金に含まれるの?

よくある質問が、残業に関する質問です。条件①の所定労働時間に残業時間が含まれるかどうかは、実態で把握します。所定労働時間とは、契約上の時間のことであり、臨時的な時間は含まれません。ただし、契約上は20時間未満でも、2か月連続で労働時間が20時間以上になり、さらにその状況が続くと見込まれれば、3か月目から社会保険加入となります。

次に、②の月額賃金についてですが、この賃金には残業代は含まれません。その他、賞与や通勤手当、臨時的な賃金なども含まれません。

 

社会保険に加入すると何が変わるの?

社会保険は、公的な保険です。保険に入ることになりますから、一定の条件に当てはまった場合は、保険金(手当金等)が支給されることになります。主なものとしては以下の制度があげられます。

・傷病手当金
病気や怪我で4日以上、仕事休むことになった場合は4日目から給料の3分の2の金額が傷病手当金として通算で1年半支給されます。健保組合によっては、その組合独自の上乗せ給付があるところもあります。

・出産手当金
いわゆる産休手当のことで、出産日以前42日から出産の翌日以降56日まで、給料の3分の2が支給されます。

・老齢年金
老後の年金は、大きく老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があります。社会保険に加入するということは、厚生年金に加入することになりますから、老後は、老齢厚生年金が増えることになります。

老齢基礎年金は、20歳から60歳まで未納も免除もなく、きっちり納めた場合、65歳から年間約80万円を受け取ることができます。しかし、年間80万円だと、老後の生活に不安があるのではないでしょうか。今回の適用拡大により、老齢厚生年金も支給されれば、老後の生活にも安心感が増すことになるでしょう。

老齢厚生年金の支給額は人によって異なります。目安の金額が、厚生労働省のサイトに記載されていますから、参考にしてください。

厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/dai3hihokensha/

・障害年金
障害を負い一定の状態になった場合は、障害年金が支給されます。障害等級が1級と2級であれば、厚生年金に加入していなくても、障害基礎年金は支給されますが、厚生年金に加入することによって1級と2級の場合は、障害厚生年金が上乗せ支給される上、3級でも障害厚生年金が支給されます。さらに、3級より軽い一定の障害の場合は、一時金が支給されます。

遺族年金
万一のことがあった場合は、家族に遺族年金が支給されます。厚生年金に加入経験がない場合、遺族基礎年金は支給されますが、遺族基礎年金は18歳以下(障害等級1、2級の場合は20歳未満)の子どもがいないと支給されません。一方、厚生年金に加入することで、遺族厚生年金が支給されることになります。

 

社会保険に加入しないことによる雇用保険への影響

今回の社会保険適用拡大で、働く時間を減らして106万円以内に年収を抑える選択肢を取るケースもあるでしょう。この場合、雇用保険の加入対象からも外れる可能性がありますから、注意が必要です。

雇用保険の加入基準の一つに「1週間の所定労働時間が20時間以上」という基準があり、この基準に満たなくなると、加入対象から外れ、失業時の基本手当や育児休業給付が受けられなくなることになります。

 

具体的な金額を確認して働き方を考える

社会保険適用拡大によって、受けられる社会保障は大きく変わります。年金額や保険料のシミュレーションが以下のサイトでできますから、自分のケースを確認して働き方を考えてみましょう。
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/dai1hihokensha/

 

公的保険アドバイザー
前田菜緒