専業主婦の社会復帰時に「教育訓練給付制度」とは
出産や育児で仕事を辞め、育児が一段落つき仕事に復帰しようと思っても、自分が希望する仕事になかなかつけないことはあります。退職前に正社員としてバリバリ働いていたとしても、育児期間のブランクは大きく、時代が変わっていることすらあります。就職活動が厳しい、そんな時は教育訓練給付制度を利用してみてはいかがでしょうか。コースによっては高度で専門的な資格や知識を身に付けられます。
教育訓練給付制度とは
教育訓練給付制度とは、能力開発やキャリア形成を支援し、就職を促進させることを目的とする雇用保険の制度です。国が指定する講座を受講し終了すると、その費用の一部が教育訓練給付金として支給されます。対象の講座は2021年11月現在、約14,000講座あり、レベルや給付率の違いにより専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3つに分けられます。
利用できる条件や対象者
では、まずは教育訓練給付制度を利用できるかどうか確認しましょう。下記の質問に答えていくと、利用できるかどうかが分かりますが、注目したいのは赤枠です。
出典:厚生労働省「教育訓練給付制度のご案内」リーフレットより
離職後1年以内という条件が、出産や育児などを理由で離職した場合は、20年以内に期間が拡大されるのです。出産や育児で仕事を辞めた場合、子どもが幼稚園や小学生の時に社会復帰を目指す人は多いでしょう。この場合、まだ20年を経過していないでしょうから、この条件はクリアできそうです。さらに、育児とは18歳未満の子の育児に限りますが、この条件もクリアできています。
ただし、適用対象期間延長の手続きをしていないといけません。手続きは「受給期間・教育訓練給付適用対象期間延長申請書」に記入し、母子手帳など延長理由が分かる書類を添付し、ハローワークに持参、郵送します。あるいは電子申請も可能です。電子申請はe-Gov電子申請のサイトからアカウントを作成してから行います。
自分が利用できるかどうか確認したら、次に教育訓練給付制度で、どのようなことを学べるのか確認しましょう。先ほど、レベルや給付率の違いにより3種類あるとお伝えしましたが、その3つについて一つずつ確認します。
1、専門実践教育訓練
看護師、保育士、はり師など医療・社会福祉の資格、製菓栄養士など製造関係の資格、シスコ技術者認定など情報関係の資格などを取得するため、専門学校や大学などで学ぶ講座が対象で、中長期的なキャリア形成を目的としています。受講期間は数ヶ月から最長3年で、例えば、看護師の場合、訓練期間は学校によって2〜3年となっています。
給付内容は、受講費用の50% (年間上限40万円)が受講中6ヶ月ごとに支給され、資格を取得し訓練終了後1年以内に就職した場合は、さらに受講費用の20%(年間上限16万円)が支給されます。いわゆる手に職がつきますから人生の大きな支えになります。
なお2022年3月31日までは、初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満など一定要件を満たせば、教育訓練支援給付金も支給されます。教育訓練支援給付金は雇用保険の基本手当の日額の80%です。
2、特定一般教育訓練
税理士、社労士など専門家の講座、介護職員初任者研修など社会福祉の講座、大型自動車免許など運転関係の講座など、早期のキャリア形成を目的とした講座が対象です。受講費用の40% (上限20万円)が訓練終了後に支給されます。
3、一般教育訓練
英検や簿記検定、インテリアコーディネーターなど就職促進を目的とした講座が対象です。受講費用の20% (上限10万円)が訓練終了後に支給されます。
これら3つの教育訓練について、具体的にどのような講座があるかは「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」のページで検索することができます。
自分が望む社会復帰をするために
出産や育児でブランクがあると、社会復帰する時に勇気が必要だったり、自信が持てなかったりすることがあるかもしれません。そんな時は、教育訓練制度を受けるも1つの方法です。自分が望む社会復帰ができるようチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
資格を取ったり知識をつけたりすることで自信もつきますし、その仕事に就く理由も明確になってくるでしょう。
公的保険アドバイザー 前田菜緒