フリーランスの社会保障
コロナワクチンの接種は進んでおりますでしょうか。私は先日、大手町接種センターの予約が18時からあるというので、心躍らせながらその時をパソコンの前で待っていました。しかし、なかなか画面が変わらず、大変混雑していますというメッセージが出たあと、まもなく2100本分と言われたワクチンは既になくなっておりました。いわゆる50代問題ともいわれるように自分たちの世代が世間に迷惑をかけてもいけませんので、早く接種したいものです。
さて今月は、最近特に目にするようになったフリーランス(以下「フリー」)の方の公的保険にまつわる問題をピックアップしてみます。フリーの方は、働き方が多様化する中で自由な働き方を選択した方たちですが、そこには不利になってしまうことも多く含まれますので、保険関係を中心にまとめてまいります。
働き方が多様化する中で、隙間時間などを有効に活用する機運は高まっているといえます。コロナ禍の影響もあってか、フリーで働く人も増えてきました。中には勤務時間に縛られることで体調を崩してしまい、フリーの道をやむなく選択した方もいらっしゃると聞きます。最近では、新卒で就職せずに初めからフリーランスで働く人も増えてきていることを考えると、旧態依然の働き方を変えている先駆者なのかもしれません。
自らフリーの道を選択する方は自分を信じて進んでいくことになりますが、企業の方針としてフリーになる方もいます。自由な働き方の反面、福利厚生面でのハンディを追うことになりますので、十分な対策を取った上でのスタートが望まれます。
ご存知のように、フリーで働く方は業務委託型であったり、請負契約であったりするケースが多く、そこには雇用関係が成立しないため、労災や社会保険などの公的保険は適用されません。
会社勤めをされている方は、ほぼ自動的に健康保険料や厚生年金保険料が給与から控除されていますので、それほど意識をされていない方が多いのですが、実際に給与明細を見ると、こんなに保険料を納めているのかと驚く方がほとんどです。しかし、同じ年収ベース、同年齢で、会社員とフリーの方の健康保険料や年金保険料を比べてみると会社員の方が負担額は少ないことがわかります。事業主が半分負担していることをこういったことでわかってもらえるいい機会でもあります。
仮に年収360万円の場合で算出すると、会社員の健康保険、厚生年金保険の負担額は年間約50万円、フリーの方は62万円、専業主婦の奥さんの国民年金保険料を加えるとさらに約20万円の差が開くことになり、さらにその幅が広がることがわかります。
フリーの方に労災保険の適用はありませんので、損害保険等で対応するとなるとその負担も増えます。会社員の場合は労災については事業主が全額負担しますので自分からの持ち出しはありませんが、このあたりもフリーになって初めてわかることなのかもしれません。労災については先日もお伝えしていますが、料理配達員が増加したことを踏まえて、料理配達員にも「労災の特別加入」を認める動きを示しています。中小企業の代表者などで、一般の労働者と同様の仕事をすることが多い人には、特別加入制度として通常の労災保険とは別に適用する制度となっています。しかし、ここにきて料理配達員の事故や、フリーランスのITエンジニアなどの長時間労働による過度なストレスを受ける人たちが増えていることもあり、加入の対象となるよう検討していることを改めてご確認いただければと思います。
働き方の多様化の中で不自由になることもあるフリーランス。将来設計を改めて見直していただき、本当の自由な働き方を見つけていただきたいものです。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫