消えた老後2000万円問題、老後の家計は黒字になる?!

年金 2021/08/06

老後2,000円問題が世間で騒がれましたが、あれから2年、実は2,000円問題は消えたことをご存知でしょうか。最新データによると、老後の家計は黒字になります。どういうことでしょうか。データとともに老後資金対策の方法についてお伝えします。

 

「老後は2,000万円不足する」その根拠は

 

2019年に老後は2,000万円不足すると報じられましたが、その根拠は総務省が行っている家計調査にあります。全国の高齢者世帯の平均収入約21万円に対して、支出が約26.4万円、その差は1ヵ月あたり約5.4万円です。

 

毎月5.4万円の赤字が、仮に30年続けば5.4万円☓12ヶ月☓30年=約2,000円になり、2,000万円不足するという計算です。ちなみに、下記が当時の家計調査の収入と支出の内訳です。

 

出典:総務省「家計調査の年報(家計収支編)平成29年」

 

これは、2017年の高齢世帯の家計状況ですが、2020年にはコロナの影響もあり、家計状況が大きく変わりました。2017年には、なかった項目が2020年には現れたのです。それは「黒字」の項目です。

 

2020年は一人一律10万円の特別定額給付金が支給されたことや、公的年金などの収入が一定基準額以下の年金受給者に対して支給される「年金生活者支援給付金」の支給などが要因となり、家計収入が増えました。

 

一方、コロナによる外出自粛等で支出が減少しました。収入が増え、支出が減り黒字になったというわけです。下記が2020年の家計調査の収入と支出の内容です。

 

出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)令和2年」

 

上記の表をみると、支出欄の一番右に黒字1,111円が発生していることが分かります。収入の内訳を見ると、「社会保障給付」、「その他」ともに、2017年より増えていることが分かります。

 

家計調査によれば、コロナの影響があるとはいえ、支出を抑えれば、黒字生活が可能ということになります。

 

家計調査は老後資金を準備するための調査ではない

 

特別定額給付金は全国民に対して給付されました。高齢夫婦世帯の場合、2人分20万円が支給されたわけですから、1ヶ月あたりに換算すると約1.7万円の収入が増えたことになります。確かに、家計収支に大きな影響があります。

 

そのため、この特別要因である1.7万円分の収入がなかったと考えてみましょう。すると2020年の収入は約24万円です。総支出額は25.5万円ですから、赤字は約1.5万円、これが30年続くと、赤字総額は540万円です。

 

2000万円必要だと思っていた老後資金は540万円で良いということになるのです。では、540万円なら、どうにかできそうだ、これで老後は安心と言えるでしょうか。恐らく、そのような単純な問題ではないでしょう。

 

要は、老後赤字を出さないためには、収入と支出のバランスを取ることが大切であり、これらの調査結果は、統計上の数字で、私達が老後資金準備をするための数字ではないということです。

 

結局、老後はいくら必要?

 

老後資金対策をするのであれば、老後は収入と支出のバランスを取れる家計であるか、取れないなら何が原因か、その原因を突き止め、早めに対処することが大切です。

 

そのためには、まずは自分の年金額を知ることが必要です。自分のおおよその年金額を知る方法はこちらの動画で紹介しています。

https://youtu.be/DZnMBq47zt8

 

自分の年金を計算してみて、年金では支出をカバーできないと思うなら、厚生年金に加入して厚生年金を増やす方法もあるでしょう。あるいは、すでに厚生年金に加入しているなら、退職金や企業年金があるのか、あるならいくらくらいか、知る必要があるでしょう。あるいは、年金の受け取り時期を遅くして、年金額を増やす繰り下げという方法もあります。

 

自分の年金を計算して、不足金額が出たとしても、対処方法は貯めることだけではないということです。

 

老後への備えは、2,000万円必要だから不安、調査結果が黒字になったから安心といった平均的な数字で語られるものではありません。収入や支出の金額は今回の調査結果からわかるように毎年変化します。だからこそ、自分の年金額を知り、今から老後の生活を見据えて、準備してほしいと思います。

 

公的保険アドバイザー 前田菜緒