学生に年金免除制度はない?学生納付特例とは
20歳になると、国民年金に加入しますが、学生には、国民年金の納付が猶予される学生納付特例制度があります。この特例を利用している学生は、約65%(*)、国民年金を納めている学生のほうが少数派のようです。
筆者は、公的保険アドバイザーとして、年金の相談を受けることが多いのですが、この特例を誤解されている人がとても多いのです。みなさん「学生時代は免除制度を使っていたので、年金を払っていません」と言います。しかし、学生に免除制度はありません。どういうことでしょうか。
学生納付特例は年金の免除制度ではない
ご相談者が口を揃えて言う「学生時代の免除制度」とは、「学生納付特例」のことです。しかし、学生納付特例は、免除制度ではありません。納付猶予制度です。保険料を納めることを先延ばしにする制度です。言い換えると、「卒業したら猶予した分の保険料払ってね」という制度なのです。
一方、年金の免除制度とは、年金を納めないけれど、老後は、免除された割合の半分の年金は受け取ることができます。年金を納めなかったとしても、老後は一定額の年金を受け取ることができるのです。さらに、年金を増やしたいなら、後から保険料を「払うこともできる」制度です。
しかし、学生納付特例は、年金を納めなかったのであれば、その分、老後の年金は減ります。老後の年金を受け取るには、年金の加入期間が10年以上必要ですが、学生納付特例は、この加入期間には含まれるものの、年金額には反映されません。
年金額を増やす方法は
では、どうすれば納めなかった期間分の年金を増やすことができるでしょうか。方法は主に3つです。
1,10年以内に追納する
学生納付特例期間中の保険料は、10年以内であれば、後から納めることができます。しかし、3年以上前の保険料については、割高になります。これは、加算額が上乗せされるためです。たとえば、2011年の国民年金保険料は、15,020円でしたが、2021年に2011年分の保険料を納めるなら、15,350円になります。
どれだけ加算されるかは、10年国債の利率を基に計算されます。今は、金利が低いので、加算額も数百円程度となっていますね。しかし、金利が上がると加算額も上がりますし、できれば、社会人になってすぐに追納できると良いですね。
とはいえ、社会人になって日が浅いと、貯蓄も少ないでしょうし、給料も高くないですから、追納するとむしろ生活が苦しくなってしまうかもしれません。その場合は、次の方法を考えてみてはいかがでしょうか。
2,60歳以降も国民年金に加入する
国民年金は20〜60歳まで40年間加入するものですが、60歳までに年金を受け取る資格がない場合や、保険料の納付済期間が40年ない場合などは、60歳以降も国民年金に任意加入をすることができます。
任意加入することで年金額を増やすことができます。ただし、厚生年金に加入していると、任意加入はできません。その場合は、次の3番を確認してください。
3,60歳以降厚生年金に加入して働く
60歳以降も厚生年金に加入して働くなら、実は学生納付特例期間中の減った年金分をカバーできることがあります。老後の年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類で、国民年金として納めた保険料は、老後は老齢基礎年金として、受け取ることになります。
60歳以降も厚生年金保険料を納めると、老齢厚生年金を増やすことができますが、老齢基礎年金を増やすことはできません。しかし、増やせない分は、老齢厚生年金に経過的加算という名前の上乗せを受け取ることができます。この上乗せが、老齢基礎年金と同じくらいの年金額なのです。したがって、学生納付特例を利用し、その後、保険料を追納していなくても、働く期間によっては追納したのと同じ程度の年金額にすることができます。
学生納付特例期間中の年金をカバーする方法を知る
学生納付特例を利用していた人は、追納すべきか?疑問に思っている人は多いと思いますが、10年経過すると納めることはできません。そして、そもそも学生納付特例は、年金の免除ではないこと、納めなかったとしてもリベンジする方法はあることを知ってほしいと思います。自分にとって、利用しやすい方法を見つけ、年金額を増やしていけると、老後に対する不安は軽減されるのではないでしょうか。
*厚生労働省「平成29年国民年金被保険者実態調査結果」
公的保険アドバイザー 前田菜緒