会社員なのに育児休業給付(育休手当)がない?その理由と解決法
「会社からもハローワークからも育休手当はないと言われました。本当でしょうか。」公的保険アドバイザーの私は、30代の女性からアドバイスを求められました。ハローワークが言っているのですから、本当なのでしょう。しかし、なぜ会社員なのに、育休手当がないのでしょう?その理由と解決策をお伝えします。
育休手当の受給要件とは
育休手当の受給要件には「育児休業を開始した日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上ある」という要件があります。この女性は、今の会社に5ヵ月前に就職しました。現在妊娠6ヵ月目ですから、もし育児休業を取得できるなら、取得のタイミングは入社後10ヵ月目になります。
つまり、今の会社での雇用保険の被保険者期間は、育休開始時点で10ヵ月ということです。12ヵ月には届きませんが、被保険者期間は転職前の期間も通算できます。転職前、この女性は、正社員として一般企業で10年働いていました。
そして、退職して6ヵ月後に今の会社に転職をしました。前職と現職の雇用期間被保険者期間を通算できれば12ヵ月以上の期間があります。しかし、この女性の被保険者期間は、通算できなかったのです。
原因は失業給付を受けていたこと
なぜなら、退職して再就職するまでの6ヵ月間に失業給付を受けていたからです。失業給付を受けている場合、被保険者期間はリセットされます。したがって前職分の被保険者期間は育休手当受給のための期間に含まれず、この女性は要件を満たさないということで育休手当を受け取れないのです。
失業給付は前職の被保険者期間に基づき受け取れるものですから、被保険者期間がリセットされるのは当然と言えば当然ですが、育休手当は雇用保険から支給されるものという認識がないと、腑に落ちない点かもしれません。結局、この女性は育休手当を諦めるしかありませんでした。
なお、失業給付を受け取らなければ通算できるかといえばそうではありません。失業手当の受給資格の有無によります。
夫は育休手当を取得できる
しかし、公的保険アドバイザーとして、「育休手当を受給できない」だけでは、寂しいアドバイスになってしまいます。女性が育休手当を受給できなくても、夫がいます。夫は、転職歴はありませんし、受給要件を満たしています。
育休は男女関係なく取れる制度ですし、夫が取得すれば、育休手当受給できる、できないという、この問題は丸くおさまりそうです。もちろん夫の会社の職場的な問題もあるでしょうが、これからの時代は 男性も積極的な育休取得が望まれる時代です。
女性は自分自身が受け取れないため、就職などのタイミングを少し後悔していましたが、夫が取得するという新しい選択肢があることを知り、「夫と相談してみます」とやや声が明るくなりました。
女性は出産後、体調等の変化がありますし、初産ならとくに、産休終了後すぐに復職することに抵抗があるかもしれません。自分の体をいたわりながら、夫婦2人で子育てする環境を作っていただきたいと思います。
公的保険アドバイザー 前田菜緒