傷病手当金などの改正について

税・社会保障 2021/04/01

最近の公的保険に関する話題は、高齢化対策と少子化対策がメインになっています。この紙面でも繰り返しお伝えしておりますが、70歳雇用に向けた動きに伴い、厚生年金や雇用保険など公的保険の改正が続きます。今回は、次世代または全世代に関係する健康保険法の改正についてまとめてみます。実際の施行は来年の令和4年1月からですが、これまで要望の多かった内容や制度を促進するためのものもありますので、ぜひご確認ください。

社会保障改革の議論の中で、現役世代の給付が少なく、高齢者中心になっていた構造を見直す動きがあり、全ての世代に対しての社会保障ということで議論が進んでいます。

今回、これらの議論の結果、以下の項目の改正が見込まれています。

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1.全ての世代の安心を構築するための給付と負担の見直し

(1)後期高齢者医療における、窓口負担割合の見直し(令和4年10月1日から令和5年3月1日までの間において政令で定める日)
(2)傷病手当金の支給期間の通算化
(3)任意継続被保険者制度の見直し
2.子ども・子育て支援の拡充
(1)育児休業中の保険料の免除要件の見直し(令和4年10月)
(2)子どもにかかる国民健康保険料の均等割額の減額措置の導入
3.生涯現役で活躍できる社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)
・保健事業における健診情報等の活用促進(厚生労働省:全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要より抜粋)
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この中で、1(2)の傷病手当金の期間通算化と、1(3)の任意継続被保険者制度の見直しについて詳しく解説していきます。

まず、傷病手当金の期間通算ですが、現状では傷病で休んでいた場合でも一旦病状の回復などにより職場復帰すると、復帰に伴って不支給となった期間は通算されることなく期間だけが過ぎていくことになっています。最近ではがん治療などで入退院を繰り返すことも多く、それらに対応する制度が望まれていましたので、「実際に支給を受けた期間を通算して1年6ヶ月」と改正する案となっています。今は、治療しながら仕事をする「ながらワーカー」も増えていることも考えての改正になりますので、安心して治療しながらお仕事ができる環境になっていきそうです。ちなみに、公務員などの共済組合では、既にこの制度が適用されているとのことです。

次に、任意継続被保険者制度の見直しについてです。保険料算定については、従前の標準報酬月額か、全被保険者の平均標準報酬月額のいずれか低い額とされていますが、健康保険組合などでは財務状況の悪化等も懸念されていることから、退職前に高額な報酬が支払われていた方にも相応の負担をいただくということから、従前の標準報酬による保険料の算定方式の案が出されたところです。また、被験者期間は2年とされていますが、2年間という縛りが退職後の被保険者の選択の幅を制限しているという考え方から、期間を1年とし、被保険者からの任意の脱退も認めることが案として出されています。

生活していく上で欠かせない公的保険制度ですが、なかなか理解できないことも多くあります。制度を理解してうまく活用することで、将来の見通しも明るくなることでしょう。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)