70歳雇用に向けての改正について

労働・雇用 2021/03/01

いよいよ国内でもコロナ対策のワクチン接種がはじまりました。みなさんはすぐにでも接種したい方ですか、それとも敬遠する方でしょうか。インフルエンザワクチンも体内に異物を入れることから敬遠する傾向もあるようですが、コロナに限らず自分だけではなく、家族や友人、または市中感染で拡大してしまうことを考えると、早いうちに接種できれば少しでも早く平穏な日々が訪れるのではないかと考えています。
ワクチンは医療従事者のあとは高齢者を中心に対象が広がっていきますが、同じように今年の4月からの改正で高齢者雇用の対象者が広がって行くことになります。こちらも期待できる項目ですので、70歳雇用に向けた改正事項をまとめてみます。

この紙面でも何度かお伝えしておりますが、年金制度の改革が進められており、社会保険加入の拡大など対策がとられています。

  1. 被保険者の適用拡大(2024年には従業員数51人以上の企業に勤めるパートタイマーが加入)
  2. 年金受給開始年齢拡大(現行70歳までを75歳まで繰下げる:2022年4月から順次施行)
  3. 在職老齢年金の見直し(60歳から65歳未満の基準額を47万円に引き上げ:2022年4月施行)
  4. 在職定時改定の導入(65歳以降、毎年1回年金を再計算:2022年4月施行)
  5. 確定拠出年金の加入可能要件の見直し(加入可能年齢の引き上げと、受給開始時期の拡大:2022年4月から順次施行)

これらは年金に関する改正項目ですが、今後の高齢者雇用の改正において関係してくるものが以下の通りとなります。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 70歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年の廃止
  4. 65歳から70歳までの就業機会を確保するため、雇用による措置以外の場合は、創業支援等の措置(継続的な業務委託契約や、社会貢献事業に継続的に従事する制度の導入を講ずる)を導入

以上の改正項目となりますが、実は努力義務とされており、強制力という点においては65歳までの雇用とは異なるタッチとなっています。現在の65歳までの雇用制度は現行のままですが、65歳以上はまだ緩やかな制度といってもよいでしょう。

現状の65歳までの雇用を守る制度では、本人が希望すれば必ず何らかの雇用形態で継続することが定められていますが、65歳以上の継続雇用制度を導入する場合では、対象者の基準を定め、対象者を限定することが可能であるとされており、体力面、健康面、能力面などにおける基準を設けることで雇用の継続が可能かを判断することができます。賃金などの処遇については、定年後の賃金などは事業主による点は同じで、60歳定年後に再雇用するケースでは賃金を下げる対策を取る事業主が多いですが、定年年齢を60歳から65歳に引き上げた場合でも、高齢者雇用安定法では定年延長後の雇用条件については、定年直前の待遇と同一にすることまでは求められておりませんので、基本的に合理的な理由があれば引き下げることができるとされています。しかし、昨今の同一労働同一賃金の議論などもあって、短絡的に下げることができない事情もありますので、最近の判例などを確認いただくことが必要になってまいります。

65歳以降の雇用が自身の将来設計に繋がっていきますが、気力、体力だけでは解決できない問題もありますし、自分が思うように動けないことのジレンマを感じることもあるでしょう。高齢者雇用は事業主の判断となるところも多いですが、それにきちんと応じる労働者の義務も忘れずに、いつまでも働ける世界にしていきたいものですね。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)