男性の育児休業、女性の育休との違いは

労働・雇用 2021/02/03

男性の育児休業の制度が変わろうとしています。2022年、新制度の導入を目指して、育児介護休業法の改正案が国会に提出される見込みです。しかし、その前に今の男性の育児休業制度(以下、育休)は、どのような内容でしょうか。まずは現行制度の確認をしておきましょう。

 

パパ休暇

通常、育休は1回の出産につき、原則1回しか取得することができません。しかし、男性だけが取得できるパパ休暇を利用すると、育休を2回取得できます。パパ休暇とは、子どもが生まれてから8週間以内に育休を取り、同じく8週間以内に育休を終了していれば、再度、育休を取得できる制度です。

女性の場合、 出産の翌日から8週間は産後休業で、育休がスタートするのは産休が終わってからです。しかし、男性の場合は、出産当日から育休を取得でき、8週間以内に育休を終了していれば、その後、子どもが1歳になるまで、もう一度育休を取得できるのです。

                

              出典:厚生労働省「パパ休暇 制度のリーフレット」より

子どもが生まれて、休みを取る男性は多いと思いますが、有給ではなく育休を使うことができます。また里帰り出産をする女性は多いですが、男性が育休でまとまった休みを取れれば里帰りする必要もなくなりそうです。

 

パパママ育休プラス

育休は、原則子どもが1歳になるまで取得可能ですが、両親が育休を取得すると1歳2ヶ月まで延長される制度がパパママ育休プラスです。パパママ育休プラスを利用できる条件は3つです。
1、配偶者が育児休業している
2、育休開始予定が子どもの1歳の誕生日前
3、育休開始予定日が配偶者の育休初日以降

この条件に当てはまれば良いので、母親、父親とも育休の期間が重複していても問題はありません。下記のようなイメージです。

   
                 出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」

しかし、下記のケースでは、母親は育休を2ヶ月延長できません。


 
                 出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」

これは、母親の育休開始日が父親の育休より前であるため、条件3を満たさないからです。したがって、母親の育休は10月9日までになります。

しかし、パパ休暇も合わせて使うと、実は、母親の育休は2ヶ月延長できるようになります。下記のようなイメージです。


 
                 出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」

これは、母親の育休開始が、父親の1回目の育休開始より後になるためです。一方、父親においても2回目の育休は、母親の育休開始より後になるため2ヶ月延長が可能です。このように、パパ休暇とパパママ育休プラスの合わせ技を使うと、育休の取り方の選択肢が広がります。

とはいえ、待機児童問題があるように、子どもが1歳2ヶ月になったタイミングで保育園に入園できるとは限りません。保育園に空きがないと入園できませんから、パパママ育休プラスは保育園にいつでも入れる地域に住んでいる人が利用しやすい制度と言えそうです。保育園に入れないなら、そもそも最長2歳まで育休は延長されますから、パパママ育休プラスで2ヶ月延長されるメリットはそれほど大きくないかもしれません。

 

育休取得の対象者

育休を取得できるのは、原則1歳未満の子を養育する男性と女性の労働者です。非正規であっても、同一事業主に1年以上雇用されている、子どもが1歳6ヶ月に達するまでに労働契約が終了しないなど、要件を満たせば取得できます。実子、養子を問いませんし、事実婚の妻の子に対しても取得できます。ただし、法律上の親子関係が必要なため、認知をしている必要があります。

 

育休中の収入

育休中は、育児休業給付金を受給できます。給付額は、賃金× 67% (育休開始から6ヶ月経過後は50%)ですが、この賃金とは育休開始前6ヶ月間の総支給額を180で割った金額です。総支給額とは税金や保険料等差し引く前の金額です。なお、この賃金には上限と下限の金額があり、上限は456,300円、下限は、77,220円で、毎年8月1日に金額が決定されます。

 

新制度の内容

パパ休暇を利用すると、男性は育休を2回取得できますが、新制度では、8週以内に2回、それ以降も2回、最大4回まで分割取得が出来るようになります。また、妊娠出産の報告をした従業員に育休取得を進めるなど職場環境の整備が義務づけられています。

男性の育児参加率が上がると、女性のキャリア形成や少子化に良い影響を与えることが期待されます。育休を取得した男性は、そろって「育休を取得して良かった」と言いますし、新制度によって男性の育休取得が促進されることを望みます。

 

公的保険アドバイザー 前田 菜緒