兼業・副業を行う場合に確認しておきたい事

労働・雇用 2021/02/01

コロナ禍2年目となり、緊急事態宣言が発動される中、年明けとともに増えてきたご相談が「兼業・副業」についてです。業種によっては通常の業務ができなくなっているところも多く、普段の生活を取り戻すためには現状の仕事だけではやっていけないので、それをなんとかするために兼業や副業を行いたいという方が増えているようです。コロナだけの影響ではなく兼業・副業は話題になってきましたが、改めて制度についての理解や、自身の健康面での課題も多くありますので、今回は兼業・副業についてまとめていきます。
なお、昨年8月号でも「副業を行う場合の保険と税金」をテーマとしてお伝えしました。主たる仕事と兼業・副業先での労災について給付金を算出する場合に通算されることになったことや、保険と税金はどのように考えれば良いのかなどをまとめておりますのでご確認ください。

昨年は働き方改革2年目でスタートしたにもかかわらず、働き方が違う意味合いで変わりました。その働き方改革の中にも兼業・副業については提唱されており、国は第2の人生のためにも準備をしていきましょうとしています。しかし、兼業・副業を行うことでさらなる長時間労働になってしまう懸念や、健康面での負担などもあり、簡単に進めることができないものでもあります。
まず、兼業・副業を行う際に、現在お勤めの企業で兼業・副業を認めているかを確認する必要があります。これまでの場合、多くの企業の就業規則では兼業・副業を認めないとする定めをしているところが多く、企業の許可なしではすぐに始めることはできないことが多いようです。
過去の裁判例では、労働時間以外の時間は個人が自由にできる時間であるため、兼業・副業を行ったからといって解雇は無効であるという判断もあれば、重要な機密事項を抱える方が、同業他社で兼業していたことは倫理上問題があるとして解雇は有効となったケースなどさまざまです。
また、現在では兼業・副業を行うことを相談しただけで不利益な取り扱いを禁止することも企業には求められる時代ですので相談を受ける側も慎重に対応することが必要です。

では、企業の就業規則でも兼業・副業が認められていて、実際に行う場合の注意点ですが、フルタイムで働いている方は、一日8時間、一週40時間という労働時間の制限がありますので、それを超えて働く場合は労働時間の通算管理が求められます。兼業・副業で収入を得ることも目的ではありますが、長時間労働になって体調を崩してしまうことは本末転倒です。適度な時間を設定するように調整しましょう。過去の裁判例でも、終業後のアルバイトで夜の接待を伴う飲食店で毎日何時間も働いていたケースで、深夜に及ぶ時間帯での兼業は余暇利用の域を超えるものであり、解雇した企業側も社会通念上の管理や、本人の職務専念義務についても支障をきたすとして解雇が有効とされる例もありますので、働きすぎにならないような時間の組み方は重要といえます。
また、最近では自転車などを使ったフードデリバリー業務も盛んなようですが、労災の保証もないことで個人事業主としての扱いになることなどが問題視されており、休日に仕事をしたいと考えている方には事故やケガなどのリスクも高まります。自転車もそうですが、最近はオンラインでの発注が進み、宅配業者なども人材不足になり、それを副業で行う場合にも、疲れによる不注意や慣れない運転での注意力散漫なども気をつけなければなりません。

国も兼業・副業を進めていますし、実際にも進んでいますが、やっとガイドラインを示すなど対策の遅れも感じるところです。コロナ禍による一時的なことではないといえますので、労働時間や健康面とうまく調整しながら進めていただきたいと願うところです。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)