男性の育児休業は促進されるのか

労働・雇用 2021/01/01

菅総理が誕生してから、男性の育児休業取得の話題が続いているように感じます。先日の報道でも横浜市が市の職員、民間企業も含めて取得率の目標を30%と定めました。これは、現在公務員を中心に、男性から育児休業取得の申し出があった場合、まず1ヶ月の取得を促進しており、これを民間企業にも拡大していくことで動いていることによると思われ、取得を義務づける法改正もあることから進み始めたと考えられます。法改正については、罰則はないものの企業には強く発信していくものと思われますので、今月は男性の育児休業がもたらす効果などをベースに考えてみましょう。

菅総理が掲げた少子化対策についてまとめてみると、不妊治療の保険適用、男性の育児休業取得促進、これらに伴い出産育児一時金の金額をあげる動きなども加わり、今後の少子化対策で考えると充実してきているようにも思えます。
現在の産休、育児休業について公的保険での適用内容をまとめてみます。
まず、産前産後休業については、産前6週から産後8週までの間に出産手当金としてお給料の約67%(正確には標準報酬日額の3分の2)が休業補償として健康保険から、その後育児休業を取得した場合には、最初の6ヶ月間はお給料(正確には休業開始時賃金)の約67%、6ヶ月経過後は50%が雇用保険から支払われることになります。その他にも出産育児一時金や健康保険・厚生年金保険料の免除などもあり、手厚いサービスが受けられます。育児休業は、2017年の改正によって2歳まで取得できることはご存知のことと思います。
こういった政策が取られていますが、なかなか出生率が上がらない状況が続いているため、国も更なる対策を検討している状況であります。

菅総理が提言された不妊治療の保険適用ですが、原因が不明な治療に対しての負担が大きくなっていることを鑑み、2022年には拡大したい考えです。夫婦の6組に1組が不妊治療を経験しているということで、2019年に出生した乳児のうち16人に1人の割合で増加しているとのことですが、治療の回数が進むことで負担が大きくなりますので、保険適用までの期間でも自治体の助成制度の拡充も行い、制度として充実させていくことになっています。
次に、男性の育児休業取得促進ですが、2019年の調査では7.48%にとどまってはいるものの、微増していることも事実ではあります。この取得率を伸ばすことも強く推進していく考えです。前述したように、公務員から取得促進が始まっていますので、どのような進捗になるかが楽しみでもあります。
ただ制度自体を作ったとしても、その周知や徹底する意識がないことには進みませんので、国の広報活動や手続きの簡素化なども合わせて検討が求められます。煩雑になることで手続きを行わない人も多くいることを考えると、制度と実際の手続きをどう進めるかを検討していただきたいところです。

男性の育児休業取得は、やってみないとわからないことが多いといえます。コロナ禍において、在宅勤務が増えた今日、家族で過ごす時間を見つめ直すいい機会になったのではないかと思います。これまで外に出ていてなかなか育児時間や子どもと接する時間が取れなかった方にとって、かけがえのない時間になったのではないでしょうか。コロナ禍は関係ないとしても、実際に育児休業を取得した男性の意見でも満足感が得られたという調査もありますので、今後ますます増えていってほしいと願うところです。
繰り返しになりますが、制度が複雑で面倒になってしまうようではいけません。行政手続きの簡素化に加えて企業の対応もマッチすることで、国が目指す30%の取得に近づけるかもしれません。今一度男性の育児休業について考えるのも、コロナのいい影響と考えたいものです。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)