年末調整と社会保険上の扶養の確認

税・社会保障 2020/12/01

今年は、春先からマスクの生活をしいられ、夏も秋もあっという間に過ぎ去った感がありますが、気づけば年末もそこまで近づいてきております。今年は、ハロウィンも大人しかったことを考えるとクリスマスも大人しく過ぎ去りそうな感じですね。しかし、大人しいクリスマスとはいえ、経済活動を回すことも必要になり、それを支えるために働く方も増えてくることでしょう。
今月は、年末といえば年末調整ということで、今年の年末調整における注意点をパートタイマーなどで働く方の視点で考えてみます。

年末調整は、毎月のお給料から控除される所得税に関して、過不足があるのかを検証する作業です。本来は、給与から控除される税金について自分で確定申告をやらなければならないところを、事業主が代わりに手続きをし、合わせて取りすぎた税金があれば返金される制度です。
パートタイマーで働く方は、扶養の範囲で働きたい、控除を多く受けたいと思う方も多いことと思います。扶養の範囲には税務面での扶養と、社会保険での扶養の考え方がありますので、改めて税務と社会保険での扶養の範囲を確認しましょう。

103万円以下 :配偶者控除(38万円)が満額受けられる
106万円未満 :501人以上の企業に勤めている場合は社会保険料発生
130万円未満 :社会保険の扶養の範囲
150万円以下 :配偶者特別控除(38万円)が受けられる
201.6万円以上 :配偶者特別控除が全く受けられない
※いずれももう一方の配偶者の年間所得が900万円以下の場合に適用
毎年のことではありますが、この金額ラインが年末調整時には気になるところと思います。
それは、税制上の年末調整とともに「勤務調整」を考える方も多くなり、年末の忙しい時期に働き手がいなくなり、事業主は困惑するという図式が毎年繰り広げられています。できるだけ、労使双方に配慮した勤務調整になることを期待する次第です。

税制上での扶養のラインは厳格に守られていますので、一定額を超えることで税額控除が減ってしまうことは避けられません。しかし、年末調整とは異なりますが、社会保険上ではコロナ禍の影響があり、一定の収入を超えた場合でも扶養のまま継続できることが特例で定められています。

9月号のコラムでもお伝えしていますが、パートやアルバイトなど、被保険者の扶養に入っている方が、家庭における経済的事情などにより一時的に収入が増加する傾向にある場合、原則年間130万円未満であることが扶養の条件ではありますが、一時的に増加した場合であっても直近3ヶ月の収入を年収換算した場合、平均して130万円を超えていなければ、継続して被扶養者として認定されることになっています。
また、過去1年間の収入が昇給や通常の勤務時間が増大したことによる収入のアップでなければ、仮にその1年間が130万円を超えていたとしても、遡って扶養の認定を取り消されることはないとしています。

冬場に入って、さらに感染症の人数も増えることを考えると、感染した家族が自宅待機になるなど働けない状況が続くことで、他の方に負担がいきます。みんなで急場を凌いでも、お給料は働いた対価ですのでプラスされることは当然のこととなります。
家族全体の収入によっても変わってくる年末調整、自分があるいは家族がどのライン上で収入を得ているのかなど、具体的に把握することが求められる時期ですので、確認をして進めていただきたいと考えます。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)