うつ病傷病手当金
もし自分や配偶者がうつ病になったら・・・考えたくない事ですが、精神的な病気を患っている人は近年増えており、その中でも、うつ病は認知症と並んで著しい増加傾向にあります。では、うつ病で働けなくなった時、どのような公的保障があるでしょうか。会社員が休職した場合の公的保障をお伝えします。
病気や怪我で会社を休んだ時は傷病手当金が支給される
病気や怪我のために会社を休むと、健康保険から傷病手当金が最大1年6ヶ月間支給されます。支給対象となるのは、連続して3日間仕事を休んだ後の4日目以降です。3日間の待機期間に有給や土日祝日があったり、給料が支払われていたりしても問題ありません。4日目以降に給料が支払われていないことが支給の条件です。
しかし、給料が支払われていたとしても傷病手当金の金額より少なければ、その差額が傷病手当金として支給されます。傷病手当金の金額は、次の計算式によって求めることができます。
・傷病手当金1日あたりの金額
支給開始日より過去12ヶ月の標準報酬月額の平均÷ 30日× 3分の2
標準報酬月額とは、給料を一定の幅でランク分けしたものですが、1ヶ月あたりの額面の給料とほぼ同じ金額です。例えば、過去12ヶ月の給料の平均額が30万円だとすると30万 ÷ 30日× 3分の2という計算式になり、 傷病手当金1日あたりの金額は約6,700円になります。
傷病手当金は非課税ですが、住民税は前年の所得に対して課税されますから、傷病手当金受給中であっても、その分は支払う必要があります。また、社会保険料は免除されませんから、傷病手当金から社会保険料、前年所得に対する住民税を差し引いた金額から医療費や住居費など支払って生活することになります。
仕事復帰後再発したら
うつ病の再発率は約60%といわれています。筆者の以前の勤務先にも、うつ病の社員がおり、3ヶ月休職後に復職したものの再発し、その後8ヶ月ほど再度休職していました。このように、うつ病は再発すると、2回目の休職期間が1回目より長期になることがあります。
では、2回目の休職期間中の傷病手当金の取り扱いはどうなるでしょうか。実は、同じ病気や怪我で仕事を休む場合、復職した期間は傷病手当金支給期間の1年6ヶ月に含まれます。つまり、再発で休職する場合、傷病手当金が支給される日数は出勤した日分、減ることになるのです。
うつ病で休職する場合、数ヶ月単位の休職となることでしょう。焦って復職したために再発し、1年6ヶ月を過ぎてしまっては、家計にとっては非常に大きな打撃ですし、再発して再休職となってしまっては本末転倒です。
復帰時期が予想できない分、焦ってしまうかもしれませんが、再発させない仕事復帰を心がけることが大切です。ただし、再発の場合、3日間の待機期間はなく、同じ病気でも、一旦治癒し、相当期間経過後に再発した場合は、支給されることがあります。
障害者職業センターのリワークプログラム
都道府県の障害者職業センターでは、うつ病等で休職中の人のうち、職場復帰を考えている人に対して、仕事復帰に向けての専門的援助が行われています。例えば、生活リズムの見直しやコミニケーションスキルの習得、雇用主との調整などです。料金は無料ですから、利用してみると良いかもしれません。
自分の加入している健康保険を確認しよう
さて、傷病手当金は支給開始後1年6ヶ月を超えると支給されません。しかし、この期間を延長したり傷病手当金の金額を上乗せしたり、独自の給付を行っている健康保険組合があります。
この機会にご自身が加入している健康保険組合の制度を確認しておくと良いでしょう。なお国民健康保険や任意継続被保険者は傷病手当金支給対象外となります。仕事ができなくなったとき、自分自身で収入減少をカバーできるようにしておく必要があるでしょう。
公的保険アドバイザー 前田 菜緒