がんになったら

介護 2020/09/01

国民病と言われる、がん。毎年100万人近くの方が、新たにがんと診断されています。

シングルマザーとして小学校に通う一人息子を育てているDさんは、40代のときに乳がんと診断されました。

がんと診断されたとき、「なぜ自分が?」と、病気そのもののショックも大きかったそうですが、それ以上に「どうしよう」と心配になったのが、子どものこと、生活のこと、お金のことだったそうです。

ここでは、お金の問題を中心に、Dさんの事例に沿って、使える公的制度をご紹介します。

 

 

がん治療は手術後も続く

 

Dさんが最初に「乳がんかもしれない」と気づいたのは、入浴中、胸にしこりを見つけたことがきっかけでした。気のせいかなと思いつつ、1週間経ってもやはり変わらなかったので近所のクリニックに行ってエコー検査を受けたところ、腫瘍らしきものがみられ、専門医のいる病院で精密検査を受けることになりました。

自宅からほど近い病院の乳腺外科で、改めて検査を受け、しこりの一部を採取する針生検も受けた結果、ステージⅡAの乳がんと診断されました。

その際、その病院で治療を受けるか、別の病院を探すか、少し悩みましたが、シングルマザーであるDさんにとって、「仕事を辞めて治療に専念する」という選択肢はありませんでした。そうであるなら、家から近い病院のほうが便利であり、心強いだろうと考え、検査を受けた病院でそのまま治療を受けることに決めました。

 

★ポイント★病院選びについて

病院を選ぶときには、治療実績はどのくらいあるのか、専門の医師・看護師等がいるのか、「がん診療連携拠点病院」に指定されているところはどこか……などが目安になると思います。また、がんの治療は、手術を受けて終わりではなく、手術後も再発予防のために抗がん剤治療や放射線治療などが続くことは少なくありません。そのため、病院を選ぶときには仕事や生活との両立のしやすさも考えることが大切です。

 

がんのことで相談したいときには?

 

Dさんは、手術前の検査で、ホルモン受容体陽性(ホルモンの作用でがん細胞が増殖するタイプで、ホルモン治療が効くと考えられる)で増殖能力が高いタイプであることもわかり、主治医と話し合った上で、乳房の温存手術後に抗がん剤治療とホルモン療法を行うという治療方針になりました。

がん治療は、このように複数の治療を組み合わせる「集学的治療」になることが多いもの。そうすると、医療費もかさみます。

心配していると、医師から「医療費をカバーしてくれる公的制度もあるので、一度、『がん相談支援センター』で話を聞いてみたらいいですよ」と紹介されました。

 

★ポイント★がん相談支援センターとは?

がん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談窓口。がんについてくわしい看護師やソーシャルワーカーなどが相談に応じ、治療や治療後の生活、経済面や社会復帰に関する悩みなどに幅広く対応してくれます。その病院で治療を受けていなくても、誰でも無料で利用可能です。

 

 

医療費の支払いが大変なときには

 

Dさんは早速、病院のがん相談支援センターに問い合わせ、予約を入れたそうです。

そして当日、医療費の負担について相談したところ、「高額療養費制度」ともう一つ、「ひとり親家庭医療費助成制度」というものがあることを教えてもらいました。

高額療養費制度とは、ひと月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、年齢と所得水準によって定められた「自己負担限度額」を超えた分を、公的医療保険がカバーしてくれる制度です。事前に申請し、「限度額適用認定証」をもらうと、窓口での支払いも、自己負担限度額分のみで済みます。

一方、ひとり親家庭医療費助成制度は、ひとり親家庭を助ける制度で、子どもが18歳に達した年度末まで、その子どもと親の医療費の一部を支給してくれるというもの。

Dさんの場合、ひとり親家庭医療費助成制度のほうで、保険診療分の医療費は全額助成を受けられそうでした。

 

★ポイント★ひとり親家庭医療費助成制度とは

ひとり親家庭医療費助成制度は、自治体によって名称が多少異なり、助成の内容や所得制限の基準も異なります。住民税課税世帯では自己負担分が1割になるところもあれば、自己負担分が無料になるところもあります。お住まいの自治体のホームページをまずチェックしてみてください。

 

休業中の収入減を助けてくれる制度

 

もう一つ、Dさんが悩んでいたのが、職場復帰のタイミングです。

Dさんの場合、温存手術なので、入院期間こそ1週間弱と短いですが、その後、抗がん剤治療が控えています。主治医からは「抗がん剤治療は通院でできますが、副作用の出方は人それぞれなので、最初の1回は仕事を休まれる方もいますよ」と言われていました。

そうすると、手術後の回復期間も含めて、1カ月近く仕事を休むことになります。有給休暇だけではカバーできないかもしれないので、その間、収入がなくなることが心配でした。

そのことを相談員に伝えると、「傷病手当金という制度もあるので、会社の方とも相談してみてください」と紹介されました。

 

傷病手当金とは、①病気やけがによる療養のための休業で、②休業するまでに就いていた仕事に就くことができず、③3日間連続して休業し、かつ4日以上休業していること、④休業した期間の給与の支払いがない(または傷病手当金より少ない)こと——という条件を満たす場合に支給されるものです。協会けんぽや健康保険組合の場合、標準報酬日額の3分の2が支給されます。

 

その話を聞き、Dさんは一定期間休業することも選択肢にいれつつ、会社と話し合うことにしたそうです。

 

ウィッグの購入費を補助してくれる市町村も

 

ひとり親医療費助成制度で保険診療分の医療費はカバーされることになり、Dさんの経済的負担はずいぶん軽くなりましたが、抗がん剤治療で脱毛するためのウィッグ、専用下着、入院時の食事代など、何かと費用はかかりました。

ただ、Dさんの住む地域では、医療用のウィッグの購入費の一部を補助してくれる制度もあったそうです。

 

がん治療は、期間が長くなりがちなので、経済的な負担も心配になると思います。ただ、治療費の負担を軽減してくれる制度、治療期間中の収入を助けてくれる制度もありますので、どうぞ賢く活用してください。

 

★ポイント★医療用ウィッグの補助事業

自治体によっては、がん患者さんに対してウィッグや胸部補整具(専用の下着、パッドなど)の購入費の一部を補助してくれるところもあります。補助金額は自治体によって異なり、上限1万円のところが多いようですが、なかには3万円というところもあります。

                                       

ライター  橋口佐紀子