副業を行う場合の保険と税金
コロナ禍の影響により本業への影響が出ている方も多いのではないでしょうか。業種によってはさらに雇用調整などでお休みを余儀なくされるケースも続いています。この状況下において、兼業・副業をされる方も多く出てきていると思われますので、今月は兼業・副業で働く際の保険と税金についてまとめてみます。
働く上での事故やケガをカバーしてくれるのが労災保険です。以前この紙面でもお伝えしましたが、兼業・副業先で被災した事故については、主となる勤務先の賃金は含まれず、給付額が大きく減ってしまうことが懸念されておりました。それが今年の国会で改正が決まり、今年の9月以降に兼業・副業先で被災しても主となる勤務先の賃金を合算して給付がされることが決定しております。給付は増えることになりますが、依然として長時間労働にならないような対策も必要ですので、負荷がかかりすぎなうような働き方を選択してまいりましょう。
次に雇用保険ですが、こちらは主となる勤務先での加入しかありませんので、兼業・副業先での加入はないものとしてお考えください。
健康保険、厚生年金(以下「社会保険」)はどうでしょうか。ご存知のように、社会保険の加入要件は常勤で働く方と比較して4分の3以上働くことが原則です。となると、サラリーマンのようにフルタイムで働く方が兼業・副業を行ったとしても4分の3の要件を満たすことはあり得ないと思いますので、主となる勤務先での加入となります。ただ、兼業・副業先で役員となるようなケースでは「二以上事業所勤務届」という書類を出して、両方に加入した上で保険料を按分して支払うことになります。この手続きを失念されると過去に遡っての保険料の徴収にもなりかねませんので注意しておきましょう。
最後に税金のお話です。兼業・副業を行う時間がそれほど多くなく、収入も多くなければ問題はありませんが、年間20万円を超えるくらいに働くケースでは確定申告が必要になります。また、所得税の計算方法も主となる勤務先と従たる勤務先では異なりますので、兼業・副業先で多く納めた所得税を調整するためにも確定申告は行っていただき、適正に税金を納めていただくことも忘れないようにしていただきたい点です。
それと、パートタイマーで働く方が、世帯全体の収入が減少したために勤務時間を延ばすこともあるでしょう。その際扶養の範囲内に抑えたい場合には、上限を意識しながらの勤務となってきます。
103万円以下 :配偶者控除(38万円)が満額受けられる
130万円未満 :社会保険の扶養の範囲
150万円以下 :配偶者特別控除(38万円)が受けられる
201.6万円以上:配偶者特別控除が全く受けられない
※いずれももう一方の配偶者の年間所得が900万円以下の場合
税制改正により、配偶者特別控除の金額が150万円に上がりましたが、社会保険の扶養の範囲は130万円のままですので、130万円を超えない範囲で働く方には超えないような働き方が必要になります。
経済活動が思うように回っていない現在では、働くことも遊ぶこともままならない状態です。働きたくても働けない状況の中では雇用調整助成金をうまく活用していただく点でもあります。雇用調整助成金の特例は9月末日までとされてきましたが、コロナ禍が続くことを鑑みて年内まで延長する議論も開始されるようです。コロナから自分を守ることも大切ですし、生活を守ることも大切です。しかし無理をしてはいけませんのでワークライフバランスをよく考慮しながら生活してまいりましょう。
(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)