年金制度機能強化のための改正

年金 2020/07/01

こんな暑い時期までマスクをつけて生活することを誰もが予想していなかったことと思います。こんなにも暑苦しいとは思いもしませんでしたが、この数ヶ月で体に馴染んだ新しい生活様式を続けていくことが感染予防、拡大防止のルールであるといえますので、暑さの中ですが継続してまいりましょう。

さて、新型コロナウィルス対策で持ちきりかと思われていた国会ですが、実は年金に関して大きな改正項目が決定されました。以前にもこの紙面でお伝えしましたが、以下の項目となります。

① 被保険者の適用拡大(2024年には従業員数51人以上の企業に勤めるパートタイマーが加入)
② 年金受給開始年齢拡大(現行70歳までを75歳まで繰下げる:2022年4月から順次施行)
③ 在職老齢年金の見直し(60歳から65歳未満の基準額を47万円に引き上げ:2022年4月施行)
④ 在職定時改定の導入(65歳以降、毎年1回年金を再計算:2022年4月施行)
⑤ 確定拠出年金の加入可能要件の見直し(加入可能年齢の引き上げと、受給開始時期の拡大:2022年4月から順次施行)
以前は、被保険者の適用拡大によって、これまで加入できなかった方も厚生年金に加入できるようになり、将来受給する年金額が上がることをお伝えしました。目先で考えると、収入が減ってしまうことへの懸念が強く出てしまう傾向もありますが、将来の備えという点では「将来の自分への仕送り」とお考えいただくと理解しやすいのではないでしょうか。
それに伴って、75歳までの繰下げも正式に決まりました。このコロナ禍によって働き方改革の話題も遠ざかっている感じもしますが、またいずれ議論されることになりますので、元気に働く姿を意識していくことも大切といえます。

また、③在職老齢年金の見直し、④在職定時改定の導入は、働く上でのモチベーションにもつながる内容となっています。在職老齢年金は、一定の給与を受けている場合、自身の年金が調整されるものですが、65歳未満の方に調整される金額のラインが大きく改定されました。47万円という数値は、65歳以上の方の在職老齢年金の仕組みと同じになり、年金の減額幅が小さくなったことで働く意欲にも大きく影響することでしょう。

もう一つの在職定時改定とはどんなものでしょうか。年金を受給しながら働いている方は、保険料も同時に納付することになっています。しかし、毎年納める保険料が年金に反映されるのは、「退職時」「65歳到達時」「70歳到達時」となっており、65歳をすぎても継続して働いている方は70歳になって漸く年金額に反映される仕組みとなっていました。これを、退職などの節目を待たずに毎年早期に年金額に反映して、働きながら年金を受給する方の経済基盤を充実させようとする狙いです。この施行は2022年4月以降になりますが、画期的な改定であるといえます。毎月納めている保険料が毎年年金額に反映されますので、自分の保険料がどのようになっているのかわからないという不安も解消することになるでしょう。それまでは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」でご自身の年金の履歴は確認するようにしてください。

最後に、コロナ禍の影響で国民年金保険料が納められなくなったという話題も耳にします。就業環境の悪化によって、今後ますます就業機会の減少も予想されます。万が一保険料が納められなくなったとしても、決してそのままにせずに、国民年金の免除制度を活用しましょう。免除される額は、全額、4分の3、2分の1、4分の1の4種類です。また、コロナ禍による特例免除もスタートしています。ぜひ未納のままにせずに、免除制度をうまく活用して、将来の年金に影響が出ないようにするための方策を取っていきましょう。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)