新型コロナにより、雇用は安定するのか

労働・雇用 2020/05/01

日本として初めて発出された緊急事態宣言、みなさんはどのように受け止めているでしょうか。コメディアンの志村けんさん逝去の一報は、まだなんとかなると考えていたみなさんの脳裏を、空虚でそして重たい風が流れ、対岸の火事ではないことを証明してくれた出来事であったといえます。

新型コロナウィルスは、まだ収束の一途を辿るどころかますます拡大するという意見もあり、経済生活、社会生活において日々ピリピリした空気が流れています。

そんな中で、私たちが働く上で直面する問題について整理してみましょう。
まず、今回の事態において、働く環境についてもたらされる影響があります。

① 在宅勤務などテレワークの導入
② 企業の売り上げ減少に伴う賃金カット
③ 上記に連動して一時帰休などの休業に対する補償
④ 解雇
まず、①テレワークについては賃金の減額などはありませんし、通勤リスクの軽減も加えると、働き方についてはマイナスよりもプラスに転じることも多いでしょう。もちろん導入できない業種もありますが、流れとしては主流になりつつあります。

次に、②賃金カットは事業全体の継続はするが、収入が減少するため全体の賃金を一定額減額する措置です。今のところこの対応を取られている企業は少なく感じます。

今回のコロナ騒ぎで最も大きな対策は、③の一時帰休における休業補償であるといえます。3月に外出自粛の報道があってから、飲食系を中心に客足、売り上げの減少が続き、この脱稿時点では多くの飲食系店舗が休業を余儀なくされています。

国は、この緊急事態を乗り切るために、企業に対して「雇用調整助成金」制度を拡充して対応しています。これは、休業させた場合に労働基準法上での補償割合でもある6割以上の賃金を支払った企業に対し補填をする政策です。従前の対応を一気に変え、できるだけ枯渇した企業の経済を少しでも潤す政策ですが、需要が多いために申請、支給決定までは相当な時間がかかると予想されます。

一時的な企業の持ち出しは多くなりますが、景気が回復した際に少しでも早く復興するためには雇用の継続が不可欠であるといえます。

そして、最後の④解雇ですが、これは③の一時帰休に反して雇用を打ち切ることから大きな問題となりそうです。先日も、あるタクシー会社が何百人もの従業員を解雇すると発表しました。休業補償よりも雇用保険の基本手当(失業給付)を受給した方が得策としての対応ですが、大きな議論を呼びそうです。会社都合の退職ですので、手続きを行えば給付は早めに受給できますが、職を失った本人にしてみるとコロナ以外でも先行きの見えない不安と戦うことになりますので、精神衛生上もよくないことは明白です。

仮に、解雇等の境遇に出会してしまった場合、国民健康保険や国民年金に加入することになりますが、国民健康保険は「非自発的失業者」の保険料軽減措置が受けられる場合がありますし(各自治体に要確認)、国民年金もそのまま未納にせず、保険料免除・猶予制度の手続きを行わないと、期間の記録になりませんので注意しましょう。

また、企業の経営者の方にも社会保険料の猶予措置があります。残念ながら免除とはならずに猶予措置となりますが、緊急対策として有効です。

このように、コロナ対策としては様々な対策が取られる一方、不利益になることも想定されますので、適正な判断をしていきたいものです。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)