在宅勤務制度はうまく使えるか
毎日報道される新型コロナウィルスに関する報道。これまでの報道であれば飽き飽きしてくる情報ですが、今回ばかりは終息が見えてこないため、見えない敵との戦いが続いています。十分にお気をつけください。
そんな中、働く上での課題として在宅勤務で急きょ対応されている企業も増えています。在宅勤務は、働き方改革の中でも取り上げられており、オリンピック開催の時期に合わせても導入する企業は増えるものと予測されておりましたが、この騒動により導入時期を早めることや、導入を急いで決定せざるを得ないケースも多くなってきています。
今月は、働く上でも大きなポイントとなる在宅勤務制度について、効果的なものと隠される課題点などを考えてみます。
在宅勤務は、自分がやりたいと思っても簡単にできるものではありません。勤務先から導入の指示があってはじめてできるものとなります。しかし、その導入には様々な問題があります。
まず重要なことは情報の管理です。今やいつでもどこでもパソコンがあれば仕事ができる環境が整ってきていますので、家でも外でも業務は可能ですが、情報漏えいについては十分な対応が必要です。家で業務を行う場合も、家族が業務スペースに入らないように注意を払うとか、インターネット環境のセキュリティも重要な問題です。
次に、公的保険の観点からは労災も問題になることがあります。仮に家で業務をしていて、机の角に体をぶつけてしまい、もしそれが大きなケガにつながった場合など、それを立証するためにも業務スペースの確保は大切になります。また、外で業務をしていたとしても、本来の業務に関連していたのかなど問われることも出てきます。事故やケガはいつ起きるかわかりませんので、明確に区分しておくことが求められます。
また、一番の問題は労働時間管理ではないでしょうか。管理下にいるわけではありませんので、どのような方法で勤怠管理を行うのかはそれぞれの企業の対策になります。見えない環境下ですので、管理する側とすれば本当に仕事をしているのかなど確認したい気持ちになることもわかりますが、執拗に管理を行おうとすると利便性を失ってしまうことも想定されます。反対に、企業内で時間管理を行わない分、時間の制限を感じずに仕事をしてしまうことも考えられます。実際に在宅勤務を行なっている企業に話を伺うと、話しかけられることがないので予想以上に業務が捗るが、その分過重労働にもなりかねないと話しています。
導入する側は、従業員の意見も十分に聞いた上で、安全配慮などの判断が求められるといえます。
在宅勤務は、上記のような問題もありますがうまく区分することで効果的です。しかしその環境がない方でお子さんがいる方は、学校が休校になってしまった場合、仕事を休まざるを得なくなりますので、経済面や精神面での負担が大きくなります。そのため、国では賃金補償を行うとしています。
今回の特例措置では、雇用保険の給付日額の最高額(8,330円)を基準に上限いっぱいの支給を行うというものです。東京都の最低賃金が1,013円ということを考えると、8時間労働相当としても8,104円ですので、事業主としてはその方の賃金には足りないケースも出てくると思われます。とはいえ、事態の急変に備えなければなりませんので、使える制度としてはうまく活用していただきたいと考えます。
今回は、健康保険の傷病手当金制度も拡大解釈を加えながら適用を広めています。いつかかったかわからない状況の中でも休業を余儀なくされるケースも多いことから、柔軟な対応が取られることは生活する側に取っては良策といえます。しかし、まだまだ経済活動にも様々な制限が入っていますので、在宅勤務や時差出勤などの対応は増えて行くことと予想されます。予防との背中合わせの中で自分を守る生活や仕事をしていかなければならない事態はなるべく早く終息してほしいものです。
(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)