育児休業の改正がもたらすもの

労働・雇用 2020/03/01

先日、国会議員の小泉進次郎氏が育児休業を取得したことで大きな話題となりました。男性の育児休業取得率は徐々に増加傾向にあるものの、まだ6.16%と少数です(厚生労働省平成30年雇用均等基本調査)。一方で、ある調査では男性が育児休業を取得したからといって、育児や家事が万全にできるかというとその傾向も少なく、せっかくの育児休業が台無しになってしまうという話もあります。
今月は、今後の法改正の動向も踏まえて、育児休業にまつわる問題を考えてみましょう。

産前産後、そして育児休業になると賃金収入がなくなりますので、給付金は大きな財源となります。現在、健康保険からの出産手当金は、およそ月額賃金の67%、雇用保険の育児休業給付金も、最初の半年間は67%(半年後からは50%)となっており、休業中の保険料が免除されることで、実質20%減程度の収入が確保されています。現在、育児休業給付金の支給率を80%に引き上げようとする案も出ているとの報道がありました。そうなると、実質的な給付額は休業前の手取りとほぼ変わらなくなり、男性も含めた育児休業取得のハードルを下げ、取得の推進につなげたいという意図のようです。給付金で育児休業が一気に増えるとは考えられませんが、朗報であることは確かです。
男性の育児休業においては、2010年から「パパママ育休プラス」という制度がスタートしていますが、ご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。育児休業は原則お子さんの1歳の誕生日まで取得可能ですが、この制度は、パパも育児休業をとることで1歳2ヶ月まで育児休業を取得することができます。ママも仕事をしていて、なるべく早めに職場に復帰したいと願う方も多いことから、パパとママが一緒に子育てを行い、少しでも長く休める制度ということで2ヶ月長くなっています。
また、これもあまり知られていませんが、男性に限り育児休業が2回取れることになっています。これは、女性の産後8週の期間を一緒に過ごすためのもので、その期間が男性の育児休業(パパ休暇)として休むことができ、1歳を超えて休むことができます。
このように様々な対策が取られていますが、まだまだ浸透しきれていない感は否定できません。国の政策は後手に回ることが多く、世界のジェンダーギャップ指数でも日本は大きく出遅れています。これは、政策が進まなかったのではなく、何も政策を進めなかった責任であると指摘された方もいらっしゃいます。男性が育児休業取得と育児や家事に専念することをしないと、今後さらに世界各国から遅れをとることにもなりかねません。

休業関連では、復帰した後にお子さんの病院通などで少しの時間を休みたいという方に、「看護休暇・介護休暇」制度があります。有給休暇を1日使うまでもない時に半日休暇を使うことや、既に有給休暇を使い切ってしまった場合に使うことができます。この看護休暇も改正があり、2021年1月からは時間単位での取得が可能になります。お子さんを病院へ送っていくことや、ちょっとした介護の打ち合わせをする場合などは効果的になるのではないでしょうか。本来の有給休暇は、法律上1日単位での取得となっており、半日休暇は事業主の配慮によるもの、時間単位の有給休暇は労使協定の元に取得するというもので、導入していない事業所もあるとすると、改正の看護休暇・介護休暇の使い勝手も出てきそうです。

国は、継続雇用を目指して様々な政策を取っていますが、まだ活用できていない部分は多いといえます。また、事業主もその対応に協力しなければなりませんので、中小企業だからといって何の対策も取らないことは人材流出にもつながってしまいます。
冒頭にも触れましたが、男性の家庭力も試される今日、少しでもいい環境の元で働き、ワークライフバランスをうまくとりながら、育児や家事に積極的に取り組んでいく男性陣が頼もしく写る時代にしていきたいですね。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)