在職老齢年金の改正が雇用を後押しするか

年金 2020/01/01

今年も「年金」関連については話題に事欠かない一年となりました。いわゆる2000万円問題では、世間をあっという間に騒つかせ、高齢者雇用に関しては在職老齢年金や高年齢雇用継続給付金の見直しなど、年末にかけても年金にまつわる話題は多かったと感じます。また、年金不安を煽ることだけでなく、楽しく理解しようとする動きもありました。YouTubeでは、お笑い芸人の中田敦彦氏による年金問題に関する動画が話題となり、この動画はとてもわかりやすいと評判ですので、将来の年金が不安だと感じている方もそうでない方も、ぜひ一度ご覧になっていただきたい作品です。

年金は「リタイアした後のもの」というとらえ方の時代から、「働いて作るもの」であるということはこの紙面上でも何度かお伝えしてまいりました。働いて年金を作るためには、厚生年金に加入することが前提条件ですが、一定のお給料を貰い続けると年金は減額されることはご存知のことと思います。「在職老齢年金」というものです。これまでは、60歳から65歳未満までの「低在老」と、65歳から70歳未満までの「高在老」にわかれ、それぞれ支給停止の基準額が決められていました。その基準額が統一されるかもしれないという報道があり、新たな話題となりました。
年金はお給料とのバランスが必要とされ、高額な給料をもらう方はそれに応じて減額されていました。低在老では「28万円」という基準額のため、年金月額が10万円の方は給料が18万円以下でないと年金が満額受給できないという仕組みとなっており、就労意欲に大きな影響が出ると以前から懸念されていたのですが、70歳雇用が現実味を帯びてくる中、見直しを行うことになったのです。これによって、65歳未満の方も基準額が「47万円」になる見通しとなり、減額されることなく働くことができるというものです。

年金については65歳未満でプラスになるわけですが、一方で今後は、雇用保険から支給される「高年齢雇用継続給付金」が廃止になるようです。この給付金は、60歳定年時の給料から再雇用の際の給料が75%未満に下がった場合、減額された給料の最大15%が補填措置として雇用保険を財源に支給されています。もちろんすぐに制度としてなくなるわけではありませんが、2025年に65歳となる昭和36年4月2日以降生まれの方からが対象となります。この制度は廃止になるか65歳から70歳までの制度として生まれ変わるかともいわれていましたが、今の段階では廃止とのことです。年金が大幅に減額されるわけではなくなりますので大きな衝撃は少ないかもしれませんが、9割以上が中小企業の中でこの制度に依存していたと考えると、企業の自助努力を見直すことを国は求め始めているとも考えられます。

このように、70歳までの雇用に向けて国は準備を進めており、その制度に則って働くことになるわけですが、元気に働ける環境があるからこそ、いつまでも健康でいられると考えます。働くことで収入も上がり、それが年金の記録となって将来的に反映され、2000万円問題で不足とされた金額を少しでも減らせることができれば、それこそ自助努力の成功といえるのではないでしょうか。
年金は、60歳から70歳の間でご自身の判断した時に受け取ることができます。65歳までの年金が受給できる方はきちんと申請手続きを行い、65歳以降に受給開始を考えている方は、そのまま仕事を継続したとしても一旦退職した年齢で再計算、最終的に70歳まで働いたとすればその時点で再計算となる仕組みです。年金には受給のタイミングもありますが、繰下げなども加えると増える楽しみもある制度です。
在職老齢年金や高年齢雇用継続給付金の改正など、正しい情報を得ることが重要です。みなさまに降りかかる情報が適切なのかどうかも含め、将来の不安を憂うよりぜひご自身にプラスになる働き方、生き方を見つけていく新年にしたいものですね。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)