パートタイマーの年末調整にご注意

税・社会保障 2019/10/01

やっと秋の雰囲気になって、収穫の秋、食欲の秋など、いい気候になってきました。しかし、消費税の増税もあり、なんとなくモヤモヤした気持ちでいらっしゃる方も多いかもしれません。今年も4分の3が経過して、気がつくとあっという間に年末がやってきます。年末に近づくと年末調整の書類が届き、面倒だなあと思うのか、自分の収入はどうなっているのかと心配に思うのか様々でしょう。そこで今月は、パートタイマーなどで働く方の年末調整について考えてみましょう。

年末調整は、税に関して過不足があるのかを検証する作業です。本来は、給与から控除される税金について自分で確定申告をやらなければならないところを、事業主が代わりに手続きをしてくれて、合わせて取りすぎた税金があれば返してもらう制度です。税制が変わったこともあり、昔ほど戻ってこないと感じる方も多いかもしれません。
パートタイマーで働く方は、扶養の範囲で働きたい、控除を多く受けたいと思う方も多いことと思います。では、改めて税務と社会保険での扶養の範囲を確認しましょう。

  • 103万円以下 :配偶者控除(38万円)が満額受けられる
  • 130万円未満 :社会保険の扶養の範囲
  • 150万円以下 :配偶者特別控除(38万円)が満額受けられる
  • 201.6万円以上:配偶者特別控除が全く受けられない
  • ※いずれももう一方の配偶者の年間所得が900万円以下の場合

このように金額を整理すると、ご自分の現在の収入から年末の段階で受けられる控除額がある程度おわかりいただけます。税制改正があり、配偶者特別控除の金額が150万円に上がりましたが、社会保険の扶養の範囲は130万円のままですので、130万円を超えない範囲で働く方もいらっしゃいます。税務と社会保険での範囲が乖離しているため、従来の働き方と大きく変わっていないことが多いのかもしれません。超えることがわかれば、扶養の範囲を大きく超えて働くことを検討しなければならなくなりますし、国は正規雇用を増やそうとしていますので、時流に乗ることになります。
しかし、その選択ができない場合に何が起きるかというと、年末調整とともに「勤務調整」を考える方が多くなり、年末の忙しい時期に働き手がいなくなり、事業主は困惑するという図式が毎年繰り広げられています。事業の正常な運営に協力するためにも、出来るだけ勤務調整をせずに働く働き方を検討したいものです。

また、税務面での期間の捉え方は1月から12月の「年単位」です。社会保険には特段の取り決めがあるわけではありませんので、従来から扶養の範囲で働いている方は、税と同じように1月から年単位で捉えることがわかりやすいでしょう。ただ、仕事を辞めた後に配偶者の社会保険の扶養に入る場合、1月からそれまでの賃金を130万円以上受けているので扶養には入れないと勘違いされている方も多くいらっしゃいます。社会保険上では、その段階から将来に向かって130万円以上の収入を得るか否かという基準ですので、退職前の賃金は算入しないことになります。この場合は、1月からということではなく、該当の月から1年間で考えるようになります。

税と社会保険は一体となって改革することになっていますが、まだ上記のような点に課題があります。最低賃金も上がりますので、年末前に自身の状況を把握しておくことも慌てない準備といえます。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)