高年齢者雇用の改正とポイント

労働・雇用 2025/04/01

近年、日本の労働市場では高齢者の雇用が大きな課題となっています。少子高齢化の進展に伴い、労働力人口の減少が進む中、高年齢者の活躍を促進するための施策が進められています。その一環として、高年齢雇用安定法が改正され、企業に対して高齢者の雇用機会の確保を求める新たな制度が導入されました。今月は、改正のポイントや企業に求められる対応、今後の課題について考えてみます。


まず、過去の法改正のポイントをおさえておきましょう。2013年の改正では、以下の点が主な変更点としてあげられました。

希望者全員の65歳までの雇用確保の義務化

  • 定年の引き上げ(65歳以上)
  • 継続雇用制度の導入(65歳までの再雇用)
  • 定年の廃止

これらは、今見ると真新しいものではなく、それ以前にあった「継続雇用制度の対象者に基準を設けることが可能」という制度が廃止され、希望する労働者全員が65歳まで働けるようになったものでした。しかし、経過措置として、労使協定を締結した場合に限り、生年月日による段階を設けて、ある一定の方は制限を設ける措置が取られました。その一定の制限の経過措置の期限が2025年3月末となっており、来月以降はこの制限がある方がいなくなるというものです。

これは、年金支給開始年齢の引き上げとの連携であり、公的年金の支給開始年齢が引き上げられる流れの中で、雇用と年金の接続を円滑にする目的として定められたものとなります。

そして、2021年4月に施行された改正高年齢雇用安定法では、以下の点が主な改正ポイントとなっています。


70歳までの就業機会の確保

  • 定年年齢の引き上げ
  • 継続雇用制度の導入(再雇用・勤務延長)
  • 定年の廃止
  • 高齢者が業務委託契約などで働ける環境の整備
  • NPO活動など社会貢献事業に従事できる仕組みの導入


高年齢雇用安定法の改正は、少子高齢化が進む日本社会において、高齢者の雇用を促進し、労働力不足を補う重要な施策です。

しかし、企業にとっては人件費や働き方の見直しといった新たな課題が生じるため、戦略的な対応が必要です。また、高齢者自身も継続的なスキルアップを図りながら、新しい働き方を模索する姿勢が求められます。


今後も、労働市場の変化に対応しながら、高齢者がいきいきと働ける環境づくりが求められることになります。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫