2025年の公的保険改正内容まとめ
2025年がスタートしました。今年は、雇用保険や育児介護休業法の改正が目立ちます。2025年に改正となる制度についてまとめましたので、チェックしておきましょう。
2025年1月
1、国民年金保険料の納付方法にクレジットカードによる2年前納(4月開始)が追加
現在もクレジットカードで当月分から翌年度3月分(13カ月から最大で24カ月分)の保険料をまとめてクレジットカードで納付することができますが、これに加えて、初回〜3月分までは、毎月1カ月ごとにクレジット納付を行い、その後、最初の4月末にまとめて2年分の保険料をクレジット納付する2年前納(4月開始)が追加されます。
4月開始の場合は、3月分までは1ヶ月ごとに納付するため保険料の割引はありません。一方、2年前納は当月分からまとめて納付するため、割引があり保険料納付額で考えると2年前納のほうがお得です。
2025年4月
1、 子の看護休暇の見直し
子の看護休暇とは、子どもが病気や怪我、予防接種や健康診断の際に休暇を取得できる制度です。今回、取得できる理由に感染症による学級閉鎖、入園式(入学式)、卒園式が加わります。また、対象となる子は小学校就学前の子から小学3年生までの子に拡大されます。
2、 残業免除の対象者を拡大
現行では、3歳になるまでの子を養育する労働者が残業免除を請求した場合、労働させてはならないルールになっていますが、対象者の範囲を小学校就学前の子を養育する労働者に拡大されます。
3、育児休業取得状況の公表義務適用拡大
男性の育児休業取得率について、現在は従業員数1,000人超の企業に公表が義務付けられていますが、300人超の企業まで公表義務が拡大されます。
4、 介護休暇取得可能な労働者の拡大
現在、介護休暇を取得できる労働者は、①週の所定労働日数が2日以下でない、②継続雇用期間が6ヶ月未満でないことが要件になっていますが、②が撤廃されます。
5、 介護離職防止のための雇用環境整備
介護休業や両立支援制度等に関する研修の実施や利用促進のための方針の周知などが事業主に義務付けられます。
6、 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
介護をしている労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する周知を個別に行うこと、40歳前後の労働者に対して介護休業制度の情報提供を行うことが義務付けられます。
7、 自己都合退職者が教育訓練等を受けた場合の給付制限解除
自己都合で退職した場合、失業給付を受給するには原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がありますが、給付制限を2ヶ月から原則1ヶ月に短縮することに加え、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けた場合は給付制限が解除されることになります。
8、 就業促進手当の見直し
基本手当の受給者が早期に再就職し、再就職後賃金が低下していた場合は基本手当支給残日数の40%相当額を上限に低下した賃金の6か月分が一時金として支給されていますが、その上限が20%に引き下げられます。
また、失業給付の給付日数の3分の1以上かつ45日以上を残して就業をした場合に、就業手当が給付されていましたが、就業手当は廃止されます。
9、 出生後休業支援給付の創設
現在、育児休業給付は休業開始から180日までは賃金の67%が支給されていますが、子どもが生まれてから夫婦で14日以上の育児休業を取得する場合は、最大28日間、出生後休業支援給付として13%が上乗せされることになります。これにより、給付率は80%となります。
10、育児時短就業給付の創設
2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合、時短の賃金額の10%が育児時短就業給付として支給されます。
11、高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了
定年が65歳未満としている事業主は、①定年を65歳まで引き上げ、②希望者には65歳まで継続雇用する、③定年制の廃止のいずれかを実施する必要があり、その経過措置が2025年3月末で終了します。4月以降は①〜③のいずれかを実施する必要があります。
12、高年齢雇用継続給付の支給率の変更
高年齢雇用継続給付とは60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下して働き続ける場合、賃金の最大15%相当額が給付される制度です。この給付率が最大10%に変更されます。
13、教育訓練支援給付金の給付率引き下げ
教育訓練支援給付金とは、教育訓練制度の「専門実践教育訓練」を受講し、受講開始時に45才未満であるなど要件を満たせば基本手当日額の80%を訓練受講中に支給される制度です。この支給率が60%に引き下げられます。
2025年10月
1、 柔軟な働き方を実現させる環境づくりと周知
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、事業主は始業時間の変更、テレワーク、短時間勤務など2つ以上の働きやすい選択肢を作り、労働者はそのうちの1つを選択して利用できるように環境づくりをしなければいけません。
また、3歳未満の子を養育する労働者に対しては、それら選択制度の周知を個別に行う必要があります。
2、 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
事業主は、労働者やその配偶者の妊娠・出産を申し出た時や子が3歳になるまでに、勤務時間や勤務地、両立支援制度の利用期間等について個別に意向を確認し、それに対して配慮することが義務付けられます。
3、教育訓練休暇給付金を創設
雇用保険に5年以上加入している人が教育訓練を受けるために仕事を無給で休んだ場合、失業時の基本手当と同内容の給付がされる教育訓練休暇給付金が創設されます。
以上が2025年に実施される公的保険関係の改正です。
公的保険アドバイザー
前田菜緒