2025年に予定されている雇用保険の法改正
早いもので年末に差し掛かりました。みなさまにとってどんな一年でしたでしょうか。振り返ってみれば、能登半島沖地震から始まった、悲しいニュースの多い一年だったような気がします。そんな年周りもあるよ!と気持ちを切り替えて新年を迎えてまいりましょう。
年が変わると、さまざまな制度も変わることが多く、公的保険に関する法改正項目も多くございます。今月は、雇用保険法の改正によって、私たちにメリットがあるものがあるのかを考えてまいります。
まずは、すでに本年10月から適用されていますが、教育訓練を受講、終了した際の費用の一部負担が、受講費用の70%から「80%」に引き上げられました。個人のリ・スキリングの支援などを推進することが目的となっています。一定要件ではプラス10%の追加給付もありますので、今後スキルアップを目指す方などには嬉しい給付となります。
また、スキルアップのために勉強したいが、なかなか時間が取れないという方に対し、教育訓練を受けるために休暇を取得した場合に賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」が2025年10月には新設されます。一時期に集中して資格取得を目指す方にとっては、離職せずにスキルアップが図れることになりますので、安心して勉強に集中できるようになるのかもしれません。
そして、一番大きな改正として、離職した際の基本手当(失業給付)をもらうまでの給付制限が2ヶ月ありますが、これが1ヶ月に短縮され、さらに離職期間中や離職日前1年以内に、自分の就職に関する教育訓練を行なった場合には、給付制限が解除されることになります。この教育訓練の内容は、教育訓練給付金の対象であるものに限られますが、離職を検討していて準備している方にとっては、次のステップへの近道ともなりそうです。
一方で、時代の流れとともになくなる制度ではありますが、高年齢雇用継続給付金の支給率が引き下げられます。この給付は、60歳の定年時と比較して賃金が75%未満に低下した場合に、最大で15%の給付が受けられるものでしたが、2025年4月以降からは「10%」になってしまいます。これは、60歳以降、65歳までは再雇用などの制度を使って継続雇用の際に適用されていたものですが、老齢厚生年金の支給開始年齢の特例対象者がいなくなることを受け、ほぼみなさんが65歳開始になることを受けて改正されます。
ご承知のとおり、人口減少による労働力人口も減少し、さらに若年層の採用が厳しくもなってきていますので、団塊のジュニア世代のがんばりが、これからの日本も支えてくれるものと考えていますし、活躍の場はまだまだたくさんあるといえます。そうなってくると、企業側は、高齢者を雇用するにあたっての賃金の設定など、抜本的な改革を進めることが必要になってきます。
ですので、元気なうちは働いて将来の資産形成を促すものでもありますので、悲観的にとらえずに考えてまいりましょう。
高齢者の賃金の設定もそうですが、若年層の賃金の引き上げも大きな問題ですし、近年では新卒者の採用が思うようにできていない企業が半数近くあるとしています(東京商工会議所「新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」)。
そう考えると、高齢者雇用も若年層の賃金引き上げも、さらに女性の再就職支援も行なっていかないと、今後の日本の未来が見えてきません。
2025年が再度みんなの活性化が図れる、働く楽しみが増える、そんな一年にしていきたいですね。
2025年もよろしくお願いいたします。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫