今後の年金制度に不安なし
5年に1回の財政見直しの検討を受け、今後の年金制度がどのように動いていくのか、当協会では厚生労働省年金局若林課長をお迎えしてセミナーを開催いたしました。資料を拝見するだけではなかなか理解し得ない内容でしたが、当日の講義をお聞きして、霧が晴れるような感覚を覚えました。
財政検証後の年金制度がどのように変わっていくのか、また年金は破綻するといった、都市伝説的な噂はどうなるのかなど、簡単に紐解いてみます。
2004年に年金財政のフレームワークが完成し、その後はそれに基づいて定期的に見直しを行うこととなっています。その段階で決定した、厚生年金保険の保険料率固定(18.3%)や、年金の給付水準を自動調整する仕組み(マクロ経済スライド)の導入など、基本路線が確定し、今もその内容は継続しているものとなります。
しかし、人口の減少やそれに伴う労働力人口の減少など、明確な要因はあるものの、経済の先行きは不透明な状態での検証が続いていることは否定できません。
冒頭に書きました「年金は破綻」するか問題も、人口が減少する中でも、社会保険の適用拡大などを含め保険料収入は上がっていることや、被保険者がいるうちは年金財政は無くなることはない、逆に言えば、被保険者がいないということは日本がなくなってしまうことになるので、年金は破綻することはないと明確に伝えていただきました。
一部、年金不安を煽るような報道や記事に惑わされないよう、正しい知識を身につけておきたいものです。
また、現在の年金の所得代替率(公的年金の給付水準を示す指標で、現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表されるもの)は61.2%となっており、厚生年金の代替率は今の段階ではとても安定しているとのことでした。しかし、今後の経済の変動によって何が起きるかわからない状況も鑑み、マクロ経済スライドを駆使しながら、最悪のケースでも50.4%を切ることのないように、調整をし続けているので、給付水準の若干の減少がない経済社会を作っていかなければならないことも認識できました。
現在の少子化の歯止めをすることがなかなか難しい状況ではありますが、女性の社会進出(ちょっと古臭い言い方ですね)によって、就労年齢も長くなり、M字曲線が変わってきていることも、厚生年金が安定している実績とも話されていました。
少しでも明るい話題で、将来を形成していくことが、いずれのシーンにも求められることがわかりました。
その他、一番気になる今後の在職老齢年金の話題もありましたが、高齢化の中でも働き続ける人たちが不安にならないような改正を待ちたいと思います。
以上のことを考えると、未来の不安は自分たちが作るものでもあり、経済を回してより良い社会を築いていく、引いては自分自身の年金額の確保にもつながるため、正しい知識と制度を理解していくことが大切であるということになります。
何が正しいのかを見極めるだけでも難しい昨今ですが、このようなお話を聞けるチャンスを見逃さずにまいりましょう。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫