高額療養費で適用される上限はいくら?

健康保険 2024/10/08

「高額療養費制度があるから医療保険に入る必要はないと思っています。」そのような意見をよく聞きます。しかし、高額療養費によって、どの程度の医療費がカバーされるのか知らない人は意外と多いものです。保険に加入する・しないの判断は本人にお任せしますが、高額療養費の上限を知らずに判断はできません。そこで、高額療養費でカバーされる自分の医療費の上限額はいくらなのか確認しましょう。

 
上限額は収入によって変わる

高額療養費の自己負担上限額は収入によって異なります。自分の上限額がいくらかは下記の表より判断ができます。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

「適用区分」に記載されている年収とは給与収入の目安です。正確に自分の上限額がア〜オのどれに当てはまるのかは、健保加入の人は「標報」、国保加入の人は「旧ただし書き所得」を基準にしましょう。

 
・健保加入の人

「標報」とは標準報酬月額の略で、標準報酬月額とは給与を一定額ごとに区切ったランク表のようなものです。基本給のほか、残業代、通勤手当、住宅手当等含む毎月の給与の額と同額と考えて問題ありません。毎月の給与がア〜オのどの区分に当てはまるのか確認してください。

 
・国保加入の人

次に国保加入者の見方です。国保加入者は「旧ただし書き所得」によって区分されます。「旧ただし書き所得」とは前年の事業所得、不動産所得、給与所得等合計から住民税の基礎控除43万円を差し引いた金額です。個人事業主の場合、確定申告時の所得金額合計から43万円を差し引いた金額と考えると良いでしょう。もっとシンプルに考えるなら、売上から経費を差し引いた金額が目安になります。ア〜オのどの区分に当てはまるのか確認しておいてください。

 

高額療養費の上限額を確認する

適用区分が分かったところで、次にひと月あたりの上限額を確認しましょう。エとオは金額が明確ですが、ア〜ウは計算式が記載されています。しかし、計算式先頭の数字ア25万円、イ16万円、ウ8万円が上限目安と考えて問題ありません。

なぜなら、この計算式で計算をしてもほぼこれら金額と同じになるためです。例えば3割負担の医療費が30万円だったとします。この場合、10割負担の医療費は90万円です。計算式記載の「医療費」は10割負担の医療費を意味しているため、実際にウの適用区分を計算すると

80,100円+(900,000円 – 267,000)×1%=86,430円

となり、ほぼ8万円と金額が変わりません。一般的に高額療養費はウの適用区分で説明されることが多いですが、アとイの適用区分になると8万円の2倍、3倍の自己負担になります。そのため「思っていた金額より上限額が高いですね。1ヵ月25万円までの自己負担は負担が大きいかもしれません。」と言う人もいます。この機会に自分の上限額および家族の上限額も確認しておくと良いでしょう。

 
自分の高額療養費の金額を知り正しい判断を

そのほか、高額療養費は健康保険の対象の費用にしか適用されない点にも注意が必要です。差額ベッド代や食事は健康保険対象外のため高額療養費の対象にはなりません。高額療養費は手厚い社会保障制度ではありますが、適用される金額や範囲を誤解のないよう知っておきましょう。その上で、保険加入の判断をしてください。

 

公的保険アドバイザー
前田菜緒