定年退職後の同一労働同一賃金問題

雇用保険 2019/05/01

新年度に変わるにあたり、働き方改革が実施されたことはご承知のことと思います。労働時間の上限規制や有給休暇の取得義務化などがメインとなっています。

その働き方改革の中で、「同一労働同一賃金」の議論があります。
同一労働同一賃金とは、正規雇用の方と非正規雇用の方が、同じ仕事をしていて同程度の責任等が課せられているとすると、「均等待遇」といって同じ待遇にしなければならず、同じ仕事でも合理的な理由があれば「均衡待遇」としてバランスをとりましょう、というものです。
実際の適用は、大企業で来年、中小企業は再来年からとなりますが、実はこの同一労働同一賃金問題、まだ先のこととは言っていられない事態が起きています。

少し前まではこの議論も、基本給や手当などの問題が主になると思われていましたが、昨年の長澤運輸事件やハマキョウレックス事件に象徴されるように、特に手当が注目されることになってきました。
それに加えてさらに問題になってきたことは、非正規雇用の方に賞与を支払わなければならなくなった判決や退職金の支払いを命じた判決などが増えてきたことです。
非正規雇用の方にとってはプラスになることですが、企業側からすると大きな課題になります。

長澤運輸事件の争点は、定年退職後に再雇用で働いたときの賃金が、以前と比べて業務量は変わっていないのに低下させられたことはおかしいと提訴したものでした。
判例の解説は別に譲るとして、ただ短絡的に賃金を下げるということは合理的ではないとされますので注意が必要です。
労働政策研究・研修機構の調査によると、定年再雇用後の賃金について、定年前の賃金から低下した率は20%から60%でした。この指標が今後の動向にどのような影響が出てくるのか注目が集まっています。

こういった定年再雇用後の賃金の低下について、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が受けられることはご承知のことと思います。
「高年齢雇用継続給付金」は、60歳時点と比較して75%未満になった方に対し、最大で15%が支払われるもので、公的保険からの大きな補助になります。
仮に、定年前に40万円のお給料だった方が、60%の24万円に下がった場合、36,000円が雇用保険から支払われるものです。
60歳前の役職定年などには適用されませんが、60歳代前半はまだまだ働き盛りでもあるし、金銭面でも負担が大きい家庭も多く、少しでも多くもらいたいと思うことでしょう。

また、在職老齢年金の「支給停止調整開始額」について、60歳代前半は「28万円」で変わりありませんが、60歳代後半の、「支給停止調整変更額」は「47万円」に改正になりました。年金額の決定に関する物価スライドでは、それほどの上昇ではないとされましたが、実際の平均では47万円に上昇しています。

私たちは、定年再雇用で賃金が下がってしまうことにくよくよせず、何らかの新しい道を見つけることを応援したいですし、仮にそうなってしまった時の補償をご提案するのも私たち公的保険アドバイザーの役目です。

4月からねんきん定期便の様式も変更になりましたので、新しい情報を収集したい方は、当協会のセミナーにぜひ足をお運びください。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)