今後の高齢者雇用の課題点

労働・雇用 2024/08/01

最近の社会保険に関する主な話題は、2024年10月から施行される社会保険の適用範囲拡大に関する法改正があげられます。この改正は、短時間労働者に対する社会保険の適用を広げることを目的としていますので、みなさんも大きな関心ごととなっているかと思われます。

10月に向けてどのような対応をすべきなのか、どの選択がご自身にとって最適なのか、時間がありませんので改めて確認いただきたい項目です。

それに加えて、少子高齢化の中で高齢者の継続雇用も大きな課題です。熟練の技を継承するための時間なのか、または、労働力不足を補う救世主なのか、さまざまな要因が考えられます。

今月は、高齢者雇用の課題点をあげながら法改正についても考えてみます。

最近の高齢者雇用に関する主な話題としては、2024年の高年齢者雇用安定法の改正があげられます。この改正は、高齢者の就業機会を拡大し、65歳から70歳までの就業を確保するためのものです。1、定年の引き上げや廃止、2、多様な就業機会の提供、3、経過措置の終了などが主な項目としてあげられます。

定年の引き上げ等については、70歳までの定年の引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入などを行うようにするなどが努力義務として掲げられていますが、完全に義務化されるまでには時間がかかるのではないかと考えるところです。

3の経過措置の終了は、あまり馴染みがないかもしれませんが、2013年の法改正により、65歳までの雇用義務化が制定されたことにより、それまでの定年再雇用の方たちに制限されていた再雇用の条件については労使協定によって締結され、それを守る制度として経過措置がなされていました。その対象となる方の年齢の制限義務が終了するのが2025年になっています。

今までも、多くの方の再雇用については労使協定の縛りがありましたが、ほぼそれに制限されることは少なく再雇用されている状況ではなかったかと考えます。

高齢者雇用の課題としては、賃金水準の問題も大きく取り沙汰されます。多くの企業が定年前後での基本給や手当の減額を実施していますが、継続雇用される方のモチベーションを維持することが重要な課題となっています。報酬が低下する中で、適正な評価が連動しない場合、どのようにして高齢者の働く意欲を高めるかが課題となっています。

国は、そのモチベーションを下げないものにするために、在職老齢年金についても改正を行なっています。2024年度から、在職老齢年金の支給停止基準額が50万円に引き上げられたことはご存知のことかと思います。2022年4月から、「在職定時改定」という新しい制度が導入され、65歳以上の厚生年金加入者が支払った保険料が毎年10月に年金額に反映される仕組みになりました。この制度により、働きながら保険料を支払う高齢者の年金額が毎年更新されるようになり、それ以前は退職時や70歳到達時にしか再算定されなかった年金が一年ごとに反映されるようになったことも大きな前進ではないでしょうか。

もう一点の課題は、高年齢雇用継続給付金の今後の改正です。高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の労働者が、60歳時点の賃金がその後75%未満に低下した場合に支給される制度で、賃金の低下率に応じて計算され、61%以下の場合は賃金の15%が支給されます。

しかし、2025年4月から、給付率の上限が現在の15%から10%に引き下げられることが決定しています。今後も高齢者の雇用継続を支援するための重要な制度として機能しますが、給付率の引き下げなどの見直しが行われるため、継続して働くのか、年金額と賃金の関係をどのように選択すれば全体的に最適になるのか、働く側も雇用する側もその方の状況や法改正情報を確認しながら、適切な対応が求められます。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫