2025年4月育児休業給付が手取りの10割に。要件や制度内容を解説

雇用保険 2024/07/05

2025年4月1日より育児休業給付(育休手当)の給付率が引き上げられ、要件を満たせば手取りで10割となる予定です。そこで、手取り10割になる要件や期間など、改正後の育児休業給付の仕組みを解説します。


夫婦で14日以上の育児休業取得が必要

現在の育児休業給付は、育児休業開始から6か月までは賃金の67%が支給さます。しかし、育児休業給付には税金や社会保険料がかからないため、手取りと比べると支給割合は実質約8割になります。

2025年4月1日からは、現在の育児休業給付に加えて、両親とも14日以上育児休業を取得すると賃金の13%が上乗せされ、合計80%になります。これは手取りにすると約10割に該当する水準です。

給付率が手取り10割になるのは最大28日間です。対象となる期間は、父親の場合は産後パパ育休の期間、母親の場合は産休後8週間以内(育休開始後8週間以内)です。この間に夫婦で14日以上の育児休業(父親の場合は産後パパ育休)を取得すると、取得した期間の給付率が上がります。ただし、配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親の場合は、配偶者の育児休業取得がなくても給付率は引き上げられます。


具体例)どれだけ支給が増えるのか 

では、具体的にどの程度の支給額になるのか確認しましょう。父親の月収を35万円、母親の月収を30万円、父親が20日間の産後パパ育休を取得したとして、20日間だけの給付金を計算します。 

現行制度の場合
父親:35万円×67%×20日/30日=15.6万円
母親:30万円×67%×20日/30日= 13.4万円
夫婦合計29万円


改正後
父親:35万円×(67%+13%)×20日/30日=18.7万円
母親:30万円×(67%+13%)×20日/30日=16万円
夫婦合計で34.7 万円

現行制度と改正後の支給額の差:5.7万円

父親が育児休業を取得した期間分しか計算していませんが、一般的には母親は20日以上育児休業を取得するでしょう。しかし、母親の手取りが10割となる期間は父親が産後パパ育休を取得した期間のみです。

また、実際は父親が産後パパ育休中は、母親は産休期間中になるため、2人とも手取り10割になる期間が重なることはありません。しかし、夫婦の月収や休業期間にもよりますが、手取りが2割増えると、家計への影響も大きく改善することが予想されます。育休を取得できる環境は、ここ数年で大きく変わりましたが、今後もお金の面では、さらに取得しやすくなりそうです。


育児休業給付の上限に注意

ただし、育児休業給付には上限があります。上限額は毎年変わりますが、令和6年は支給率67%の期間の上限額は約31万円です。支給額が31万円になる月収は約46万円です。つまり給料が46万円を超えてくると、いくら月収の67%といっても、支給額は31万円以上増えることはありません。「手取りの10割」と言っても、実際には10割にはならない人もいるでしょう。 

この点は、実際の手取りと支給額がどの程度の差になるのか、育児休業取得前に確認しておくことをおすすめします。とはいえ、出産後の1か月は家族にとって大切な時期ですから、上手に制度を活用して、育児休業を取得していきたいですね。


公的保険アドバイザー
前田菜緒