雇用保険の適用対象拡大、改正内容を解説

雇用保険 2024/06/10

2024年5月に雇用保険の改正案が成立しました。これにより2024年10月以降、雇用保険が大きく変わります。現在パート勤務で雇用保険に加入していない人も雇用保険の対象になるかもしれません。改正の内容についてお伝えします。


2024年10月

  • 教育訓練給付金の引き上げ、

 

教育訓練給付とは、指定の教育訓練を受講終了した場合に、その費用の一部が給付金として支給される制度で、一般教育訓練と特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があります。今回、改正になるのは専門実践教育訓練と特定一般教育訓練です。

まず、専門実践教育訓練においては、教育訓練受講後に賃金が5%以上上昇した場合、受講費用の10%(年間上限8万円)が追加で支給されます。現行では、資格取得等をして、かつ1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合、受講費用の20%が追加で支給されますが、これを受けていることを前提として上乗せ支給される形です。

次に、特定一般教育訓練において、教育訓練終了後に資格取得し就職等した場合は、受講費用の10%(年間上限5万円)が追加で支給されます。


2025年4月

  • 自己都合退職の場合の給付制限見直し

現在、自己都合で会社を退職した場合、失業給付は待期期間終了後2ヶ月(5年に3回以上自己都合退職の場合は3ヶ月)の給付制限がありますが、これが1ヵ月に短縮されます。ただし、5年に3回以上自己都合退職がある場合は給付制限期間3ヶ月のまま変更はありません。

また、教育訓練給付の支給対象となる教育訓練やハローワークの斡旋により受講する公共職業訓練等(予定)を受けた場合は、給付制限はなくなります。

  • 教育訓練支援給付金の給付率引き下げ

現行では、初めて専門実践教育訓練を受講し、45歳未満であるなどの要件を満たせば、受講支援として教育訓練支援給付金が支給されますが、この基準額が基本手当の80%から60%に引き下げられます。

  • 就業手当の廃止及び就業促進定着手当の引き下げ

現行では、安定した職業以外の職業(雇用期間が1年に満たない等)に早期再就職した場合の手当として、就業手当が支給されていますが、2025年4月に廃止されます。また、基本手当受給者が早期再就職し、6か月間以上雇用され再就職後賃金が離職前より低い場合は、就業促進定着手当が基本手当支給残日数の40%を上限として支給されていますが、この上限が20%に引き下げられます。


2025年10月

  • 教育訓練休暇給付金の創設

会社員など労働者が教育訓練を受けるために会社を無給で休んだ場合、その期間中の生活を支援する仕組みとして、基本手当と同じ額の教育訓練休暇給付金が支給される制度が創設されます。被保険者期間が5年以上あることが要件で、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日です。


2028年10月

  • 雇用保険の適用拡大

現在、雇用保険に加入できるのは週の所定労働時間が20時間以上の場合ですが、この要件が10時間以上に短縮されます。これによって新しく雇用保険に加入できる人は、失業給付や育児休業給付などの受給対象となります。

なお、「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間のことをいいます。


以上が主な改正内容です。雇用保険は労働者にとって身近な公的保険ですから、自分に関係しそうな内容はチェックしておきましょう。


公的保険アドバイザー
前田菜緒