働く人の妊娠、出産、育児を考える

労働・雇用 2024/06/01

出産、育児にまつわる話題は、年間を通して常に注目されており、少子化といえども積極的に次世代を支援していく姿勢も見えるところです。出産、育児という一大イベントではありますので、手続き関連や、精神的負担と感じるところなど、一生の中で数回の出来事であるために、その度に諸問題を解決する場面に出くわすことになります。

今回は、出産、育児に関連する公的保険に関する話題と、仕事と育児の両立支援や、ハラスメント関係など、職場に関する問題点、課題点を合わせて考えてまいりましょう。

まず、妊娠に伴うリスクとしては、出産時の合併症など出産後の問題も不安になることがあります。双子やそれ以上の多胎妊娠や、高齢出産などもリスクとしてとらえなければなりません。妊娠中における最初の精神的不安は、つわりなどの問題があげられます。お仕事をしている方で、つわりがひどく仕事に行くことができないなどの場合には、健康保険の傷病手当金を活用して、十分に休みをとって復帰することも可能になります。一人で悩まずに、まずは相談をしていただき早期解決を図ることが一番です。

お仕事をしている方であれば、職場への報告も必要になります。いわゆる雇用機会均等法では母性健康管理措置を義務付けており、就業規則への記載がなされている企業も多いことでしょう。妊娠中や産後1年を経過しない女性従業員の方から申し出があった場合には、働く要件を緩和するなどの措置を行わなければなりません
健康保険では、出産予定日から起算して6週前から産後休暇に入ることができますが、妊娠したことを早めに企業などに伝えることによって、母性保護の観点からの措置を受けられやすくなりますので、安定してきた段階でも、もっと早い段階でも報告をしておくと良いでしょう。

この際、企業の人事の担当者などは、妊娠をしたことの報告を受けたことで、その方に不利益となる対応をとってはならないとされています。これも、前述の雇用機会均等法により厳格に定められていますので、適切な対応を行わなければなりません。
厚生労働省の調査によると、雇用機会均等法関連のハラスメントの相談件数は減少傾向にあるものの、セクシャルハラスメント、母性健康管理に関する相談が多く、マタニティハラスメントに関しては若干減少傾向にあるようです。とはいえ、若干の現象でも起きてしまってはいけませんので、十分な対応を取ることを、従業員全員が理解しておく必要があるでしょう。

出産、育児に関する話題で、お仕事をしている方にとって、仕事と育児の両立支援は大きな関心ごとであり、心配な部分ではないでしょうか。育児休業が終わって職場復帰する際に、前のように仕事ができるかとか、仕事内容についていけるかなどの不安が起きてしまいます。
人事担当者としては、職場復帰プログラムを検討して、スムーズに戻れるような配慮を行うと同時に、まわりの協力も得ながら進めることが大切です。時短勤務やフレックスタイム制での勤務など、今までとは異なる働き方になることが多いですので、復帰する方としても継続して勤務できることを理解しながら、プログラムに則っていくことなどが求められます。

妊娠、出産をした本人も、人事担当者も制度を理解し、サポートする体制を整えておくことが必要になりますし、男性の育児休業の取得率も増えてきていますので、心無い対応にならないように気をつけてまいりましょう。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫