5月病、6月病にならないために

労働・雇用 2023/07/01


梅雨の時期に入り鬱陶しい天気が続いておりますが、この梅雨入りの前には5月があり5月病と称され仕事に行きたくない症候群が続く傾向にありました。最近では、この5月病を回避する対策を取る企業も出てきたとのことですが、なかなか治ることはないのかもしれません。

新入社員によくありがちといわれる5月病ですが、中堅の方や新たに管理職になったポジションの方などもこの傾向にあるとされ、医学的には「抑うつ状態」や「適応障害」と判断されることが多いようです。

今回は、5月病に端を発する精神疾患が起きた場合に公的保険の果たす役割をまとめてまいります。

こんな方がいらっしゃったとします。これまで数々の実績をあげ、組織をまとめ上げ、将来を有望視された方が、その組織でも重要な位置付けとなるある部署の管理職に就任されました。上司やまわりからの期待も大きくそれに応えるべく対応していましたが、その組織風土に馴染めなかったことと、自分の思いの空回りもあり、これまでコミュニケーション能力も高くリーダシップを発揮してきた方が次第に口数も少なくなり、欠勤が続いてしまい、最終的には精神疾患で休職をすることになってしまいました。

これは実話ではありませんが、みなさんのまわりでも十分起こりうる内容であることはおわかりいただけるかと思います。

このような方が公的保険の適用をどのように受けることができるのでしょうか。

この場合には労災保険が考えられます。仕事上の負荷がかかり、それによって精神疾患を発症したことの申請になりますが、精神疾患の労災申請の場合、すぐに認められるというものではなく、行政による状況確認が行われることが多くあります。実際にどのような負荷がかかって発症したのか、長時間労働の有無はどうか、またはパワハラが絡んでいなかったかなどさまざまです。

精神疾患に関する労災申請は年々増加傾向にあり、令和3年度の申請状況は2,346件(前年より295件増)、そのうち支給決定件数は629件(前年より21件増)となっており、申請件数の割合からすると支給決定に至るケースは少ないものとなっています。これは、業務上での負荷ではないと判断されるのか、元々ご自身の過去の病歴が発症したのではないかとされ、業務外での健康保険での適用とされているかのいずれかになります。

脳・心臓疾患の労災認定基準が令和3年9月に改正されましたが、精神疾患の認定基準については、令和2年8月に改正された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」に基づき判断されています。これまでの長時間労働が引き起こす原因とされていたものに加え、業務以外の心理的負荷や本人に起因する要因なども含めて判断されることになっています。

精神疾患の申請件数は前述しましたが、脳・心臓疾患の申請は753件(前年より31件減)、支給決定件数は172件(前年より22件減)で、精神疾患の申請が3倍強となっており、割合としても精神疾患の申請が多い状況です。

様々なストレスを抱えながら生きていかなければなりませんで、勤務と勤務の間のインターバル時間をしっかりと設けることや、不規則な時間にならないことなどへの注意を自ら行うことで軽減されることも多々あります。大きな負荷がかかった場合には代償休息をきちんと取る、あるいは取ることを認める組織になることが求められる時代になってきています。

 

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫