75歳以上の親を扶養に入れられる?

税・社会保障 2022/12/09

年金生活の親を自分の扶養に入れると節税できる。そのような考えから、親を扶養に入れることを考えている人もいるでしょう。実際、筆者も40〜50代のご相談者から質問をよく受けます。しかし、扶養に入れるかどうかを判断するには、社会保険や税制を知っておく必要があります。そこで、親を扶養に入れるメリット、デメリットについて今一度確認しておきましょう。なお、ここでは親の年齢を75歳以上(後期高齢者)としてお伝えしています。

 

75歳以上は医療保険制度の扶養に入れない

現在の日本の医療保険制度では国民は健康保険・国民健康保険・共済組合等の医療保険に加入します。しかし、75歳になると、それまでに加入していた医療保険から後期高齢者医療制度に加入することになります。

後期高齢者になると、一人一人が被保険者になり保険料を納めることになります。つまり、扶養の概念がなくなるのです。したがって、後期高齢者の親を子の扶養に入れることはできません。ここでいう「扶養」とは医療保険上の扶養のことです。会社勤めの人が、家族を健康保険の扶養に入れると、同じ健康保険組合の保険証を使いますが、この仕組みが後期高齢者には適用できないと言うことです。

 

親の医療保険の保険料や自己負担割合と子の年収との関係は?

では、後期高齢者の保険料はどのように決まり、子の年収が関係することはあるのでしょうか。結論から言うと、子が同居することによって保険料の負担が変わることがあります。そもそも、保険料は被保険者が均一に負担する「均等割額」と、所得に応じて負担する「所得割額」からなります。令和4・5年度の均等割額の全国平均は年間約48,000円で所得割率の平均は9.34%です。ただし、所得が一定以下の場合は、保険料が減額される仕組みがあります。

例えば、東京都の場合、親本人の収入が150万円の年金のみで単身住まいとすると、保険料は減額対象となり年間13,900円になります。しかし、もし子が世帯主として親と一緒に住んでいると、子の年収によって保険料は上がります。なぜなら、保険料の(均等割の軽減)は、被保険者の所得と同一世帯の世帯主(後期高齢者でない場合も含む)の所得を合算して計算されるためです。つまり、同居の子が世帯主の場合は、親と子の所得を合計して保険料が計算されるということです。

一方、後期高齢者の窓口の自己負担割合は一般所得者1割、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割です。この自己負担割合は、同一世帯の後期高齢者の所得によって決まります。したがって、子が同居していたとしても子が75歳以上でない限り、親の自己負担割合に影響はありません。

 

親の介護保険の保険料や自己負担割合と子の年収との関係は?

介護保険は40歳になると加入する制度です。65歳になると保険料は原則年金から天引きされ、一人ひとりが個別に保険料を納めます。したがって、扶養の概念はありません。保険料は本人と世帯の住民税課税状況により決定され、市町村ごとに金額が違います。

親本人が住民税課税者であれば本人の所得のみで保険料が計算されますが、親本人が住民税非課税の場合は、住民税が課税されている子と同居することによって(同一世帯になることによって)介護保険料が上がることがあります。

一方、介護サービスを利用した場合の自己負担割合は1割、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割です。自己負担割合は、本人の所得と65歳以上の同一世帯の人の収入をもとに決まるため、子が親と同居していたとしても子が65歳以上でなければ、親の自己負担割合に子の年収の影響は受けません。

 

税法上の扶養には入れられる

子と親の生計が同じで、親の合計所得が48万円(年金収入のみの場合年金額が158万円)以下であれば、親を扶養に入れることができます。親が70歳以上で同居している場合は58万円、同居でない場合は48万円を控除できるため、子は親を扶養していると確定申告や年末調整で申告することで節税ができます。

 

まとめ

今までお伝えしたことをまとめると、後期高齢者である親を社会保険上の扶養に入れることはできません。また親と子が一緒に住むことで、親の医療保険と介護保険の自己負担割合に変化はありませんが、保険料に影響を及ぼすことがあります。
 

 

一方、税法上であれば親を扶養に入れることができます。公的保険制度や税制など、様々な制度においてルールが異なりますから、今一度、間違えないように確認しておきましょう。

 

公的保険アドバイザー 
前田菜緒