雇用保険の失業給付受け取りタイミングを4年延長できる起業後廃業の特例とは

雇用保険 2022/06/08

2022年7月1日より、雇用保険に加入していた人が独立開業し、その後、廃業した場合、要件を満たせば雇用保険の基本手当(失業手当)を受給できるようになります。要件とは何かどのような制度か解説します。

 

事業開始後に廃業しても基本手当を受けられる特例

 

雇用保険の基本手当は、雇用保険に加入していた人が仕事を辞めて求職活動をしている場合に、失業中の生活を安定させるために支給されるものです。支給されるポイントは、求職活動をしていることです。

 

したがって、会社退職後に求職活動をせず起業したり、退職後すぐに起業したりした場合は、求職活動を行っていないため、基本手当を受けることができません。また、基本手当を受けられる期間は、原則、離職日の翌日から1年間です。この期間に一定の日数を上限として、基本手当を受け取ることできます。

 

妊娠・出産や病気などで働けない理由がある場合は、求職活動ができないため、受給期間を延長することができますが、そうでないなら、基本手当を受給できるのは、原則1年、1年を超えると手当は受け取れません。つまり、離職後すぐに起業し1年経ってから廃業した場合などは、基本手当を受けられないのです。

 

そこで、基本手当の受給資格のある人が、事業を開始した場合、その事業をしている期間を最大3年間、失業等給付の受給期間に含まない特例ができました。これによって、事業実施期間の最大3年間と原則の1年間と合わせて、合計4年間、受給期間が延長されることになり、基本手当の受け取り時期を延長できるようになったのです。

 

 出典:厚生労働省「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案概要」

 

特例が適用される対象者

 

特例が適用される対象者は、次の通りです。

 

1、退職後に事業を開始した人

2、退職する前から事業を開始し、退職後にその事業に専念する人

3、その他、管轄公共職業安定所の長が認めた者

(開業準備をしていたけれど、開業しなかった人など)

 

対象外の事業

 

特例が適用されない事業は、次の通りです。

 

1、事業の実施期間が30日未満

2、離職日の原則1年後より以前30日未満に事業を開始している

 出典:厚生労働省「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案概要」

 

3、受給資格者が、その事業を開始するにあたり、すでに、再就職手当または就業手当の支給を受けている場合

4、基本手当を受給しながら事業を開始するなど、受給資格者が自立することができないと管轄公共職業安定所の長が認めた場合

 

申請手続き

 

申請する場合は、事業開始日の翌日から2か月以内に、受給期間延長等申請書に開業届等を添付してハローワークに提出する必要があります。また、受給期間特例の手続後に、事業を廃止したり、休止したりした時は、速やかにハローワークに届けないといけません。

 

万一の際のリスクに備える

 

開業した当初は、廃業することになるなんて考えていないかもしれません。しかし、万一廃業となってしまった場合、まして、借金があると、生活破綻のリスクは非常に大きくなります。

 

今回の特例は、就業形態が多様化する中、個人事業主の廃業後の求職活動を支えるものとなります。適用されるには、申請が必要ですから、期限までに手続きをしておくようにしましょう。

 

公的保険アドバイザー 
前田菜緒